出鱈目に繰り出される触手を避けながら、巨獣の背後に回り込む紺碧の光の獅子。
「リーダー、ヒトミ、チーフらを頼んだで! ハイパー・ディメイション・システム、スターティング・オーバー!
バロン・ホーリー・ダンス!」
青い戦闘機から、ハリネズミのようなミサイルが一斉に発射され、巨獣の二股の巨大な尾を破壊した。
その一瞬の隙をつきセレニテリアスはレーザー砲でシルバー・フォックスに覆いかぶさる瓦礫を破壊する。
幸いシルバー・フォックスのエンジンは、どうにかこうにか生きていた。
傷の痛みを押してハンドルを握るレオンの横では、血を流しながらも倉澤チーフが最大パワーに調整したブラスターシュートを二丁拳銃にして、巨獣の踵のアキレス腱がある部分を正確に撃ち抜いた。ついに巨獣は、その体を支えられなくなる。
その間ワルキュリアがレーザー砲で触手を片っ端から撃ち落としているところへ、サヤのカマエルが帰ってきた。
「これは熱いわよ。ギガナパーム、熨斗つけて、全部くれてやるわっ!」
しかもサヤは、バーニングシュートで着火までしている。
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たかが虫けらどもに自分が圧されている。火炎地獄で悶えながら、スペースビーストは震えた。
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ゼロのカラータイマーが、ブルーの点灯から紅い点滅に変わった。だがゼロもソラも全く慌てた様子はない。
“ウミ、ありがとう。もういい。君も限界だろう”
恋人を労うソラの声は、いつもの優しさに満ちている。
“でもソラ。今から貴方達が”
“サンキュー、ウミ。もう大丈夫だ。あとはオレとソラを信じてくれ”
ソラの恋人であるウミは、月星人の超能力で月に降り注ぐ太陽の光を、ソラを通してゼロに与えていたのだった。
“わかったわソラ。次のデート、楽しみにしてるわ”
ウミからのテレパシーが消える寸前、また、強い光がチャージされた。これはラストショットだ。
“ゼロ、見えるかい。テラの光が、ちゃんと輝いている”
両目を傷つけられたゼロと、固く両目を閉じているソラ。
“ああ、感じる。今、オレの右手にいるのはサヤだな。熱くて強い。左手にはタカフミだ。……リーダーにヒトミ、チーフにレオンもいる”
ソラは自分を星にイメージして、テラを探した。
カストルとポルックス。冬の夜空に輝く、仲良く並ぶ双子座の星に例えられる兄弟。どれだけ闇が深い夜でも、二つの星は輝く。厚い雲のむこうに青空が拡がるように。
“テラ、そしてこれは、あのねーちゃんだな”
“ああ、ヒロコさんだね。あの人も光を抱いているんだ。ゼロ、見えてきた。これが、あのビーストだ”
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「兄さん! ゼロ! 僕も、負けないからね」
闇の中でテラはペンダントを握り締めた。兄さんが教えてくれた、うるとらまんになれるおまじない。セブンのワイドショットの構えを取ってみせた。
母の大切なイヤリングだったスターサファイア。今その一つはソラの左耳たぶに、もう一つはテラの胸元で、青い輝きを放っている。
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“……見えた。ソラ、あれだな。まるでブラックホールだ”
“まさにブラックホールだな。光があって、初めて見える闇”
天文学者のソラは、宇宙物理学者であった父から教わったことを思い出した。
ブラックホールは今のように、電波や重力波、スーパーコンピュータによる緻密な計算が出来るようになるまで、どうして見つけていたか、ソラ、わかるか。
光を消そうとする闇、そうして、ブラックホールを探していたんだ。
それより以前、まだ観念ですらなかった頃は、それを心で見ていたんだ。
“行くぜ、ソラ”
“ああ!”
碧宙の剣を正眼に構え、俯いていたゼロが顔を上げた。碧宙の剣が、不思議な淡い翠色の輝きを帯びる。
そう、ゼロもソラもまた、プラズマスパークの聖なる光からチカラを託された存在だ。
もはや焼け焦げた芋虫のような、ビーストエレキングだった物体は恐怖した。あの翠色の刃は、今、自分を消滅させようとしている!
そんなビーストの心の軋みを感じ、ヒロコは気をたわめた。
ビーストはまたしても恐怖した。内部にいるあいつが、自分を道連れに自爆する!
むろん今はテラを守っているため、自爆などできない。だが、その気はそれでもビーストを撃った。瞬間、翠に輝く碧宙の剣を手にゼロは飛んだ。
「ゼローっ!」サヤの叫びより早くビーストの内部へ飛び込んだその手の翠色の刃が正確に闇を捉えた。
“手応えあり!”
すぐさま二つの輝きを光の泡で保護するや、ゼロスラッガーを胸にセットした。
「これがラストショットだあーーっ!」
碧宙の剣の翠とスラッガーからの碧が、闇を切り裂いた!
コメント
もも
2020年 08月09日 22:59
ラストショットですね
ふしじろ もひと
2020年 08月09日 23:06
もも様こんばんは。ついに次回で決着です。