＜『史上最低の侵略』その４３＞
ＭＦ

take-43

December 1st 12:40

「う、ウルトラセブンとゼロだってぇ～～？」

　見事なまでに声をハモらせて驚くポンポス星人五人組。大きく見開かれた十個の瞳がゴミ捨て場で拾ったせいで時々画面が映らなくなるモニター代わりのブラウン管テレビに釘付けになる。
　しかもこのテレビは致命的な欠陥を抱えていた。スピーカーが壊れて音が出なかったのだ。だから昆虫人間たちは味方たるＢ・ｉ・Ｒ・Ｄと敵方のサロメ星人たちの応酬をなに一つ耳にできぬまま、生まれて初めてパントマイムを観たおのぼりさんよろしく目を白黒させるばかりだったのだが、およそ洞察力や聡明さとは縁のない彼らがそんな状況を正しく理解できるはずがなかった。やおら立ち上がった首魁ボースが手を打って叫ぶその言葉！
「ワシらは騙されていたのだぁあっ！　ウルトラセブンが正義の味方である以上、あっちが本物でこっちが偽物に違いない！」
　それを聞いた四人の部下も一斉に色めき立つ！
「な、なるほど。さすがはボース様！」
「知らずに偽物を応援していたのかっ」
「今の今まで騙されていたんですね！」
「乙女の純情踏みにじるなんて最低っ」

　威厳をもって頷くや、高らかに命じる偉大なる指導者！　その瞬間、変身ベルトがブツッと弾けて正体を顕すトドのごとき昆虫人間だが、もちろん気にする者など誰もいない。
「さては憎っくき悪党め。今まで正体を偽り地球に潜伏しながらワシらのカナリー制覇を妨害していたのだな！　ならばこの場で叩き潰し、その手柄でなにがなんでもアニキ様をＢ・ｉ・Ｒ・Ｄの隊長にお就けするのだあっ」
「とは申されましてもボース様、あれの起動まではあともう少し時間が……」
「うぅ～む仕方がない。それまでみんな、セブンとゼロを全力で応援するのだあぁあっ！」
　おおっと叫び返すや、またもや音の出ないテレビの前で応援団よろしく大騒ぎを始めるポンポス星人たち。その不安定な画面の中では……。


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「デヤアアアっ」
　裂帛の気合いと共に突き込む若き戦士の拳を左右に避けるや、絶妙の時間差で両側から回し蹴りを放つロボットたち。上に跳び回避するゼロの動きに合流するように繰り出された白熱する拳が胴に炸裂！　壮絶な爆発がウルトラ一族の若者を吹き飛ばす。
「ぐあっ」
「ゼロ！」
　叫ぶ三機をかすめるように飛翔する二つの影がまたも時間差をつけてゼロを追撃！　セブンをかわしたところへ鋭くヒットした偽ゼロの一撃が、そしてセブンの放った返し技が手負いの勇者を大地に叩き落とし、瓦礫だらけの地面に背をめり込ませたゼロの腹に二体の蹴りが突き刺さる！
「ぐぉ……っ」
　身をよじるゼロをさらに蹴りつけざまに前後に飛び退くや、間髪を入れず放つワイドショットが立とうともがく若き戦士を直撃する。たちまち天を貫く紅蓮の火柱に勝ち誇る双子の復讐鬼！
「愚か者め、我らが見かけだけ似せて作ったとでも思ったか！　この二体には貴様とセブンめの戦闘データを手に入る限り載せているのだ」
「貴様の戦い方は些細な癖まで解析され、もはや完全に見切っておるわ。相手を模倣しつつ超えるは我らサロメの科学の神髄と知れえっ！」

　やがて炎の中から現れた満身創痍のゼロの姿。さすがの打撃に膝を落とし、赤く変じたエナジーコアも激しく明滅しているが、にもかかわらず顔を上げ敵を見据えるその気迫！　それは単なる怒気などではなく、ぎりぎりまで撓められ引き締められた内なる怒りというべきものだった。なにかが違っていた。それまでのゼロと思えなかった。やがてゆらりと立ち上がった若き英雄は己が姿を映す正面の敵にいい放つ！
「なるほど、しょせんデータ頼みか。ではその愚かさ浅はかさをこの手で思い知らせてやるまでだ！」



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