<『史上最低の侵略』その44>
A
take-44
December 1st 13:05
「む、無茶や、ゼロ!」
「偽ゼロも偽セブンも、正にセブンにゼロと同等!」
「タカフミ、リーダー、何いってるの? ゼロが偽物にたやすく負けるなんて、そんなことあるわけないじゃないっ!」
勝ち気な眼差しで、満身創痍のゼロを見つめるサヤ。
サヤは気づいた。ゼロがしなやかだと。
普段のゼロは、喧嘩に明け暮れるテディ・ボーイのように肩肘張って突っ張って、いわば力が有り余ってもてあましている。そんな印象を受ける。
だが今のゼロは、何とリラックスしているのか。
そしてリラックスしているだけではない。だからこそのピン! と張り積めた弓のような、緊張とテンションの高さが伝わってくる。
「さあ、ウルトラマンゼロ! 地獄へ送ってやるっ!」
「地獄で後悔するがいいっ!」
力まず佇むばかりのゼロに殴りかかる超合金の戦士たち。次の瞬間、白熱した光の爆発が全ての者たちの視野を覆う。そして、視力を取り戻した全員がもらす驚愕の声!
「ば、ばかな!」「こんなはずがっ」
「マジかっ?」「クロスカウンター!」
それぞれ相手の鉄拳が、互いの顔面に鉄拳を炸裂させて固まっている偽ゼロと偽セブン! その真ん中で、ほれぼれするような優雅な曲線を描いて反らされているゼロの背中。次の瞬間、若き戦士は逆立ちするように両手を地面につけるや、偽者たちに蹴りを炸裂させる。顎に勢いのある蹴りをまともに食らい、たまらず吹き飛ぶ偽戦士たち!
離れた場所に着地したゼロの両手にはすでにゼロスラッガーが握られている。そのまま静かに、けれど余分な力の完全に抜けた姿勢で、ウルトラ一族の若者は再び身構える。そんなゼロに跳ね起きざまに肉薄する偽者たちもまた必殺のスラッガーを振りかざす。だが!
「うおっ! ゼロ、凄いわっ!」
両手にスラッガーをかざし突進してくる偽ゼロ。その刃が首を掠めた瞬間、ゼロは小さなジャンプの一跳びで偽者が斬りつけるスラッガーの上に立ったのだ。
「まるで広商野球部伝統の日本刀の刃渡りだわ!」
斬りかかろうとする偽セブンには左手の、自分を睨む偽ゼロには右手のスラッガーで、牽制している。文字どおり刃一枚の上に築かれた緊張をはらむバランスの見事さに、思わずもらすサヤの声が陶然たる色を帯びる。
「ゼロ……」
…………………………
偽ゼロと偽セブンの熾烈な攻撃を受けていた時だった。
“くっ! オレやセブンの動きを全部コマンドしてるだと!”
“君や、セブンの動きを? ならばゼロ、俺が戦う!”
“何だと?”
“君やセブンの動きを完全にプログラミングしているなら、逆に予想外の動きには対応出来ないはずだ。どれほど高度な人工知能でも思考ができる訳じゃない。プログラムデータになっていない動きなら、計算外のはずだ。君が少しでも回復出来るよう、俺が時間を稼ぐ!”
!!
先日の名古屋上空のワームホールから出現したスペースビースト、ダルク・メイアとの闘いでのソラの戦いは、ゼロには予想もつかない、ソラならではの作戦だった。
斬れば強酸の体液でダメージを食らい、斬っても斬っても再生する生命力の塊。そしてソラに偽りの父の苦悶を見せつけ、その恐怖で膨れ上がろうとした、邪悪で忌まわしい化け物。
だが、ソラは父の面影を弄んだ化け物を許すほど甘くはない。ゼロスラッガーをトゲ付きのメイスに変えて体内を破壊していくという作戦を取り、そして恐怖で膨れ上がるビーストの性質を逆手に取り、自分達の圧倒的優位を見せ付けることでビーストを自家中毒状態に追い込み止めを刺したのだった。それを思い出したゼロは、己が体のコントロールを全てソラに託したのだ。
…………………………
わずか数瞬のことだった。偽セブンのアイスラッガーがゼロのアキレス腱を斬りつけたとたん、ゼロの右足爪先が迫る刃を蹴り砕いた。そのまま偽ゼロのゼロスラッガーを、片方を同じく蹴りで砕くや最後の一枚は自らのスラッガーで叩き割ったのだ!
「ひゃあ! 形勢一気に逆転や!」
「隙をついて攻撃するわ。タカフミ、サヤ!」
「ラジャー! まるでアダム・クーパーの『スワン・レイク』だわ」
世界的な男性バレリーナを思わせる優雅なゼロが、それに似合わぬ口調で敵を挑発する。
「ヘッ! 坊主頭が偽者にはお似合いだぜっ!」
敵にバレぬようあえて声に出しつつも、思わずソラを賞賛するゼロ。
“スゲエッ! なんて手品なんだっ!”
“美しいモノは機能的だ。でも、その美しさや機能的であることだけに拘ると、思わぬ弱点が出る。
限られた出力で速く軽快に飛ぶことだけを求められた零戦は、極限の洗練と引き換えにパイロットの安全や機体の強固さを失ったんだ”
ソラは一度、『ファザーURANUS』に、ゼロスラッガーの弱点を解析させたことがあった。華奢で繊細なゼロスラッガーはいわば日本刀のような物で、ある方向からダメージを一点に集中させれば壊れる可能性があると計算が出た。そのポイントを覚えていたからこそ、トウでのキックで偽者たちの刃をあるいは蹴り砕き、あるいは自らの刃で叩き割ることもできたのだ。
そのとき轟く凄まじい爆発音! 散開しようとした偽者たちをB・i・R・Dの三機が一斉攻撃で牽制したのだ。味方がくれた絶好のチャンスだ!
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コメント
もも
2022年 02月02日 06:52
良い感じですね
ふしじろ もひと
2022年 02月02日 07:05
もも様おはようございます。
このままいければ勝てたんですが(汗)