<『史上最低の侵略』その42>
A
take-42
December 1st 12:35
「あれは、ゼロ?」
「なんでや? なんでセブンまでっ!」
立ち上がる影に、驚きを隠せない真柴リーダーにタカフミ。
「ゼロじゃないわ、偽者よ! ゼロは、そこに」
サヤが叫ぶ。たった今偽インペライザーを撃破し、消耗しつくして膝をつき、肩で荒い息をしているゼロこそ共に戦うカマラーダなのだ。
「真柴リーダー、アーカイブUGにて類似がヒットしました。サロメ星人が破壊工作を行おうと作り上げた、偽ウルトラセブンです!」
ミッションルームの高嶺科学分析部リーダーから、検索結果がコクピットに転送されてくる。
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「手の混んだ手品をしてくれますね。偽インペライザーに続いて偽ウルトラセブンに偽のゼロとは」
「あの合金、そうやすやすと出来るモノではないな」
夢野市市役所の市長室。市長と筆頭秘書は大型テレビを模したモニタで、スラムに聳え立つ偽りの勇者達と、消耗しつつも立ち上がろうとする真の勇者候補生を見つめている。
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「……セブンにゼロ? いや、ウルトラマンは、悪いことなんか、しないっ!」
避難シェルターでモニタを見ていたテラは、バスケットの柄を握りしめる。
「兄さん、ゼロ。早くそんなの、やっつけて! ツクヨさんが、お腹空いちゃう!」
だがテラは知らない。ワルキュリアのコクピットに当の「ツクヨさん」がいることを。そして「大好きなソラ兄さん」がゼロと共にあることも。
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「七浦くん、大丈夫かね。顔が真っ青だ」
「あ、館長。すみません。少し目眩が」
「これ、使ってください」
自習室にいた女の子が膝掛けをウミに差し出す。それにくるまり目を閉じるウミ。強敵の出現に再び精神体を月へと向かわせ、ソラを通じゼロにパワーを与えようとしたのだ。
だが、彼女の消耗は激しかった。本来ならもう少し出来るはずだが、月の反対側にある時空の門が不安定なせいか、時空の門と重なっている暗黒の月の力が強くなっている。
光の月の一族である月星人にとって、暗黒の月は災いの源でもあった。月を棄てることになった日もまた、暗黒の月が光を吸い尽くさんばかりだったと記録は伝えている。ついに暗転し始めた意識を必死で繋ぎつつ、月の乙女は一つの体の二人の若者たちに最後のメッセージを送る。
“ソラ。それに……ゼロ。心一つに、乗り切っ……て”
「な、七浦くん! 誰か」
だがもうその声は、気を失ったウミには届かなかった。
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「まだ動きが鈍いわっ! 今のうちに叩きましょう!」
屹立する偽の巨人を牽制しつつ、タカフミと真柴リーダーに呼び掛けるサヤ。
「そやな! こんなん、さっさと潰すのが一番や」
偽インペライザーの砲撃をかわし切ったバロンのタカフミもそれに応じる。そしてソラの愛機ワルキュリアを操縦する真柴リーダーも、二体のロボットをビームスキャンした結果をアリーナへ転送しつつ返す。
「サヤの言う通りね。こんなモノ、さっさと壊してしまいましょう!」「ラジャー!」
タカフミのバロンがスペシウムミサイルを叩きつけ、サヤのカマエルからギガナパームが降り注ぎ、真柴リーダーのワルキュリアからは、蜂の巣にせんとばかりにレーザー砲が放たれる! だが。
「え?」
「なんでやねん!」
「こんなことって……」
あれだけ弾薬を撃ち込んだというのに、ロボットたちはなんのダメージも受けていない。そして三機の対怪獣用戦闘機を二対のカメラアイが仰ぎ見る!
「サヤ、タカフミ、リーダー! 危ねえから下がれっ!」
“君だって、まともなコンディションじゃない”
「でもなソラ! オレ達が戦わなきゃ、誰が戦うってんだっ」
渾身の力を振り絞って立ち上がる、若きウルトラ戦士。
そんな満身創痍の若き勇者の前に再び視線を戻す超合金の戦士たち。
それは偽のウルトラ戦士たち。かつて地球を守り戦い抜いた、真紅の高潔なる勇者ウルトラセブン。そして今の地球の守り手として苦闘しつつも勇者たらんと努力する、若き戦士ウルトラマンゼロ。ゼロの前に立ちふさがるその正体は、サロメ星のオーバーテクノロジーが生み出した巨人たち。だが角度を変えてそれらを見れば……。
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「なんですかこりゃ! 背中が赤一色じゃないですか!」
「しかも塗料はとんでもない安物ね。ホームセンター『大工』に置いてる一番安いペンキだわ!」
真柴リーダーからのビームスキャンデータを解析する高嶺科学分析部リーダーの横で、思わず絶句するのは、レオンと西澤技術部リーダーだ。こんな詰めの甘さを容認できるエンジニアなど、天下のB・i・R・Dジャパンにいるわけがない。
「ああっ、塗りたいっ! あんなのうちの技術部四十七士なら、半日、いや三時間あればっ!」
「あんなペンキ、ハンドバッグの金具で引っ掻いても剥げるわ。錆止めにだってなるもんですか!」
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そんなミッションルームの声など知るべくもないまま、ついに立ち上がったウルトラマンゼロ!
「気にいらねえなっ!」
“偽の勇者セブンに君。ゼロ、慎重に行こう!”
「ああっ、行くぜえっー!」
消耗した肉体を気迫で駆り立て、ウルトラ一族の若者はついに機械仕掛けの超人たちに挑みかかる!
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コメント
もも
2022年 01月31日 02:27
頑張って欲しいですねー
ふしじろ もひと
2022年 01月31日 05:27
もも様おはようございます。
なにしろこのお話におえる最大の戦いですから、そう簡単には片付かないとう……(汗)