<『史上最低の侵略』その40>
A
take-40
December 1st 12:15
“くうっ! ふざけやがって!”
「ゼロ、落ち着くんだ。偽インペライザーとはいえ相当強化されてる。これはペダニウム超合金なのかい」
“いや。ペダニウム超合金には修復力を込めることは出来ねえ。
……これはセミライブメタルだっ!
ペダン星人が取引してる中にもあるが、こいつを扱える技術を持ってる星人はそういねえ。細工が難しい金属で外銀河にある暗黒星団でしか採れねえから、手に入りにくい。弱点は炎熱だ”
「炎熱? ならば修復できなくさえすればなんとかなるっ!」
“…なるほどな! 任せていいか?”
「ああ!」
偽インペライザーから跳び退くゼロの両手に、頭部に装着されていたゼロスラッガーが飛び込んでくる。
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「……ほう。セミライブメタルを使えるとは」
夢野市市役所の18階、市長室。
市民全員緊急避難令が出ている中、市長室には隙なくダークスーツを着た老人と壮年の筆頭秘書が、大型テレビを模したモニタで戦況を見ていた。
「インペライザー、思い出しますな。『絶望の暗雲』」
「ふむ……」
市役所に勤務する人間はアルバイトや清掃スタッフを含め、全員が地下の避難シェルターにいるはずだか、何故か市長とその筆頭秘書は市長室に残っている。
一人で夢野アイランドを築いた、エンジニア市長、星宮克己。そして筆頭秘書、南雲龍彦。
二人は実は、遥かなる宇宙からの旅人である。
星宮克己市長の真実の姿は、メフィラス星人ラーダ。
南雲龍彦筆頭秘書の真実の姿は、ミステリー星人カディシュ。
地球を愛し、地球で生きることを選んだ、宇宙人達だ。
「インペライザーか。あれはインペルクラウンメタルなしでは出来ぬはず。それを細工しにくいセミライブメタルで作り上げるとは」
モニタを見ながら、銀髪の市長は、筆頭秘書に片目をつぶって見せる。
「市長。何かを企んでますな」
「君は流石に騙せないな」
「長い付き合いですから」
市長室のモニタには、旧湾岸通の死闘……ウルトラマンゼロとB・i・R・Dジャパン対偽インペライザーの映像が展開され、それを見つめるかつての異星の民にして地球人達。
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「……兄さん、ツクヨさん。タカフミさん、サヤさん」
市役所地下の避難シェルター。
テラはセントラルバスターミナルで路線バスを降りて、市役所前市民広場南から出るB・i・R・Dジャパンアリーナ行きシャトルバスに乗り込もうとしたとき市民全員避難令が出て、お弁当が入ったバスケットを抱えたままこのシェルターまで誘導されたのだ。
モニタ中のゼロとB・i・R・Dジャパンは、漆黒の全身戦闘マシンである巨大ロボット相手に苦戦を強いられている!
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市民図書館の地下、避難シェルターにも自習の学生や利用者、そしてスタッフたちが避難していた。紺色の事務服にエプロンのスタッフの中にウミもいる。
ウミはシェルターの入口近くに座りじっとしているが、その精神体は月にいた。月に降り注ぐ太陽の光を、ソラを通じてゼロに与えているのだ。
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両手に飛び込んできたゼロスラッガーを、ゼロはウルトラ念力を用いて細身の長剣とするが、熾烈な砲撃になかなか近づく隙がない。
“くっ! ヤバいぜ”
「偽インペライザーの注意を逸らして懐に飛び込む必要があるな」
嵐のような光弾をかわしつつ、ゼロとソラは精神を研ぎ澄ませてタイミングを図る。
「だあっ! リーダー、サヤ。どないすんねん!」
「カメラを潰して、再生を出来なくするのが一番だけど」
「インペライザーのカメラがどこなのか。高嶺リーダー、データ転送を」
ふと、タカフミの手が、端のプレイヤーに当たった。
♪ろっこうおろしにぃ、さあっそおとー♪
「わわっ! なんやねん! なんで俺にこんな派手に撃ちまくるねん!」
愛機バロンを目まぐるしく旋回させ砲撃をかわしつつタカフミがわめく!
“行くぜ。ソラっ!”
「ああっ!」
ゼロからバロンへ偽インペライザーの注意が移ったのを、二人は見逃さなかった。瞬時に敵の懐に飛び込むや渾身の突きを放つ二人! その細身の長剣はぶ厚い装甲の隙間を縫い、偽インペライザーの集積回路を正確かつ復原不可能なまでに破壊した。ソラが『ロザリンド』や『ファザーURDNUS』にアクセスし、様々な怪獣や星人の弱点を全て頭に叩きこんでいたからこそ可能な業だ。
途端に動きが止まる偽インペライザー。集積回路を破壊されては如何に暗黒皇帝の尖兵とて単なるスクラップだ。後退するゼロの手の中で、長剣が本来の姿であるゼロスラッガーに戻る。
“とどめだっ!”
カラータイマーのそばにセットされたゼロスラッガーが、恒星のように輝く! そこへ急降下してきた真紅の機体も目が眩むような金色の輝きを纏っている。残る一撃に賭けサヤが叫ぶ!
「ハイパーディメィションシステム、スターティングオーバー!」
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コメント
もも
2022年 01月29日 07:27
やっつけました
ふしじろ もひと
2022年 01月29日 18:29
もも様こんばんは。
とはいえサロメ双子がいったとおり、このインペライザーは前座にすぎないのです(汗)