ふしじろ もひとさんの日記

2022年 01月06日 00:06

『史上最低の侵略』18A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その18>


take-18

OCTOBER 17TH PM 22:50

 明かりの消えた部屋の中、一つのベッドで窮屈そうに横たわる一組の男女。
 ふと、男がため息をつく。

「どうしたの、ソラ。ため息ついて」
「いや、さっきから、ゼロが賑やかで、どうすればいいのか」

 男はソラ、女はその恋人であるウミだ。
 ウミはソラの肩にほっそりとした右手を当てた。

“だあっ! ソラ、何やってんだよ。話なら普通に座ってすればいいだろっ!”

 戦場での勇敢で迷いなき姿から想像もつかぬゼロのうろたえぶりに、ウミは小悪魔のような微笑みを浮かべ、わざとソラの顔の上で囁く。裸の胸が重なり合い、ソラも一瞬固まる。

「ゼロ、貴方、ホントに野暮助ね。自分が寝屋覗きしてるの、気づいてるの?」
“う、ウミ。話あるからソラを呼んだんだろ。それがメシ食ったら、なんで服を脱いで寝るんだあっ?”

 薔薇色のため息をついたウミは、また妖艶に微笑んだ。普段の清楚な可憐さとは全く違う様相に、ソラも戸惑うが、それ以上にオタつくゼロ。
 それを承知の上で、ウミはゼロに対して囁き声で呼びかける。

「全く貴方、野暮助ね。会話って、唇からの言葉だけじゃない。眼差しや身振り手振り、そして体を重ねる。言葉のいらない会話はたくさんあるわ」

 ウミは言葉を切って、ソラの唇に自分のそれを重ねた。ソラも答えてウミの髪を撫で、細い背中を抱き寄せる。

“………!!”
 ゼロの意識がブラックアウトするのを、ソラとウミは感じ取った。
「……やっと、寝てくれたわね」
 唇を離し、ソラの横に仰向けに戻ったウミが微笑む。

「ウミ、ちょっと酷いんじゃないか。トラウマになるかもしれないよ」
「優しいのね。ソラ。貴方、よくプライバシーのない暮らしに耐えているわね」
「……ゼロは、一人、一人ぼっちだから。どうして未だにゼロが俺を選んでいるのかは解らないけど、ゼロは地球には、なかなか居場所がないから」

 もっと勇敢で迷いなき若者はたくさんいる。もっと賢く頭脳明晰な若者も。
 それでもゼロはソラを選び、今も共にある。
 瀕死の自分を救うため、そしてゼロが知らない、地球という世界のナビゲーターとして、二人は一つの人体の中にいる。

「似ているから。貴方とゼロは」
 え……?
 ソラは自分の左手で横たわるウミを見つめた。

「一人であること、未熟であること、そして、無であること。貴方達は、本当に似ているわ」

 ふと、ソラは思った。
 ゼロと一体化してからは、本当に毎日が目まぐるしく、自分の事に構う暇など、全くなかった。
 両親を殺害され、育った家を焼かれ、テラと二人になったため、ひたすら弟であるテラを守るために、ひたすらに走り続けていた。
 大学院を中退し、B・i・R・Dジャパンアタックチームに参加。
 連日のような侵略者や怪獣との戦い。
 そして、テラを冒している難病のこともある。

「……ソラ」
 呼びかけられて、ソラは横を見た。

「ソラ、貴方とゼロの旅路が終わる時、私、貴方に、ここに…地球にいてほしいの」
「旅路の、終わり……」

 いつか、それも来るのだろうか。
 今の自分には、旅路の終わりどころか、苛酷な戦いの中、明日すら見えない。

「ソラ、私、貴方と戦う。武器を手に戦うことは出来ない。でも、私は、後悔したくないの。パートナーの手を離すつもりも、決してないわ」
 目を閉じているが、言葉の端々にも、ズシリと重みがある。

「ソラ、私達月星人のリーダーに匹敵する、現在の『マザー』はかつて、地球にいたことがあるの。
『マザー』は、街を焼き払う悪魔の脅威から、人々を守ろうとして、身を投げ出し、ある大いなる力に選ばれた。
……同様に、蟷螂の斧と知りつつも、一人でも多くの人を助けようと奮闘した若者と共に」

「『マザー』はそれから、侵略者との戦いに身を投じたわ。二人で手を携え、共にあらゆるこの世の絶望や悲しみに抗うために。
 でもある日、先代の『マザー』のお命が、終わる時が迫りつつある中、現在の『マザー』は、我々月星人に仇を成した存在を倒した。
 そして、『マザー』は新たなる『マザー』となるため、冥王星への帰還の時が来たわ」

 ウミは眠いのか、瞼を閉じたまま話し、少し声にも力がない。

「『マザー』は悩まれたわ。共に手を携えて戦うパートナーと戦い続けるか、それとも、新たなる『マザー』として、冥王星に戻るか。
……『マザー』が出した答えは、新たなる『マザー』になり、衰退していく月星人の希望となることだったわ。
『マザー』はそれは後悔してはいないと語っているわ。
でも、遥かに碧く輝く地球を見て、パートナーが地球から去らざるを得なかった結末に、今もため息をつかれているの。だから、私……」

 ウミの唇から、声ではなく寝息になった。

 二人の勇者への旅路の終わり。
 それはいつなのか。

 まだ、ソラには見えない。



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https://www.alldesu.com/diary/78541



← take-17
https://www.alldesu.com/diary/78513

コメント

もも

2022年 01月06日 00:12

5人はお休みですねー

ふしじろ もひと

2022年 01月06日 05:16

もも様おはようございます。
次回、5人組がタカフミにたかります(汗)

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