*激怒
「白神さ、ん」
掠れ声の呼びかけに、けれど目を見開く相手。だが捩れあうような巨獣たちの咆哮に、思わず海へと振り向く二人。その眼前でビオランテが吐きおろす溶解液混じりの熱線をも貫きつつ天頂を射抜くゴジラの熱線! 顎ごと上体を吹き飛ばされたビオランテが伐られた大樹のごとく湾内に倒れ込む。突堤へと迫る大波から逃れるべく省次に手を引かれつつも、英理加は必死の形相で背後に叫ぶ!
「戻ってビオランテ、おまえの姿に戻るのよ!」
その声が届いたのか、吹き飛んだ部分から煙を上げつつもなお無数の根を蠢かせつつ身を起こす緑の巨体。だが、背に相当する部分が大きく盛り上がるや茎状の組織を突き破るように生え出る3列の物体! 大きさこそ小降りでも葉でゴジラの背鰭を模倣したとしか見えぬその形状に声を失う二人の前で、くすぶりが残る上体からぬめり出てくる獣の頭部! 先ほどの顎よりもいっそうゴジラに似ているその形によろめき膝を落とす英理加。その姿に我に返った省次がとまどいつつも声をかける。
「どういうことです。なにが起こってるんですか?」
その言葉に返すごとく生えたばかりの背鰭を光らせるや機龍に歩みゆくゴジラに青みを帯びた熱線を吐く緑の巨獣! 苦悶の咆哮をあげる黒き巨獣の焼けただれた背に絡みつこうとする膨大な根を太い尾で打ち払い向き直るも、背鰭のダメージゆえか熱線を吐く様子を見せぬまま睨み合う両者。瞬間、微動だにしなかった機龍がだしぬけに連射するミサイルがゴジラの頭上で弧を描くや打ち払われた根を再び伸ばすビオランテを猛爆! ゴジラ以上の高さを誇る巨体を丸ごと呑み込む紅蓮の炎!
だがその目をも灼かんばかりの巨大な炎さえ、省次は認識できなかった。彼の意識はヘルメットの中で炸裂した凄まじい激怒に鷲掴みされていた。
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コメント
もも
2021年 02月06日 06:39
激しい戦いですね
ふしじろ もひと
2021年 02月06日 07:18
もも様おはようございます。なにしろ最後の戦いですので頑張ります。
ひとちゃん
2021年 02月11日 17:27
こちらビオランテ?
この怪獣はゴジラシリーズでも
ゴジラ怪獣感が異色なモノでした。
薄暗闇に光る緑の巨体!!
あれは、ほんとう迫力ありましたねヽ(^o^)丿
ふしじろ もひと
2021年 02月11日 20:26
そぼく純さまこんばんは。
今回このお話ではビオランテと機龍という、どちらもゴジラから生み出されたというより作り出された怪獣をあえて取り上げたわけですが、そうした方がそもそもゴジラとはどういう存在なのかが描きやすいのではと思ったからでした。ビオランテはおっしゃるとおり、映画ではゴジラとの闘いは2回とも夜の場面で独特の迫力がありましたが、ここでははっきり見えてほしいものがある関係上あえて朝日の中での戦いという場面になりました(汗)