*破滅の爪
はらわたを鷲掴みした巨大な爪で灼熱の憤怒を絞られるまま、身動き一つできぬ省次。だがその耳に遠い声がからくも届く。
「潜ってビオランテ、湾の底に潜るのよ!」
燃え上がるビオランテが海底に潜るや逆流する瀑布さながらに立ち上る水蒸気! 見えざる爪の力が僅かに緩むその一瞬、ヘルメットのスイッチを省次がAI優位から手動へと切り替える! はっきりと低減する激怒の暴威。だが、あの一瞬の過大入力のせいなのか、機龍とのシンクロを解除することはおろか、それ以上信号レベルを下げることもできない。それでもこのヘルメットを手放せば、機龍は手綱から完全に解かれてしまう! 未だ物理的な重みとさえまがう威力を失わぬ機龍からの重圧に喘ぐ省次の全身から、十字架を担い刑場へと引かれゆく咎人さながらの脂汗が絞り出され滴り落ちる。それでも海へ、突堤に立つ英理加の背に歩み寄る省次の目に、薄れゆく蒸気の帳から静止した機龍へと歩むゴジラの姿が映る。再生しつつあるもののなお背中全体が焼けただれたままのダメージゆえか、よろめくようなその足取りが省次には自分のものとそっくりに見えた。わき上がる痛ましさに、だが若者は次の瞬間気づく。それがそんなゴジラに向けられた、機龍の感情であることを。ようやくたどり着いた白衣の背中に、省次は呼びかける。
「白神さん、機龍はゴジラを仲間だと認識しています!」
ぴくり、と動いたように見えた細身の後ろ姿。だが英理加から言葉は返ってこない。不審に思った省次がさらに声をかけようとしたとき、肩越しに振り向いた緑化した顔が堅い声で告げる。
「ゴジラは機龍に決して熱線を吐かなかった。そして機龍の中の原子炉などまるで眼中にないわ。あいつが機龍に爪をかけたのは機龍の体を覆う異物を剥がしたいだけなのよ。機龍を助けようとして、どんな結果を招くか知りもせずに。あの疫病神!」
瞬間、脳裏を焼き尽くす巨大な原子雲に省次は絶句する!
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コメント
もも
2021年 02月11日 15:12
緊張します
ふしじろ もひと
2021年 02月11日 15:19
もも様こんにちは。いよいよクライマックスの始まりです。
ひとちゃん
2021年 02月11日 17:32
まさにヒーローゴジラの中に
緑の巨体ビオランテ&機龍がいます!
ここは、緊張します(^^ゞ
ふしじろ もひと
2021年 02月11日 20:37
そぼく純さま、こんばんは。
人間から見ればあまりにも強大な存在であるゴジラ。だからこそ人間はゴジラの力に目を奪われ、それがどんな生き物であるかを見誤る。ここではそんなお話を目指しています(汗)