ふしじろ もひとさんの日記

2020年 09月13日 03:46

私家版(地下版?)ゴジラに至る道:その12

(Web全体に公開)

<ゴジラ映画にみる戦争体験の風化 12>

*ゴジラの何が見落とされたのか

『MG1』では機龍に初代ゴジラの骨をあたえることでゴジラの本質を受け継がせることには成功しましたが、肝心のスタッフがその意味を十分に自覚していなかったためにその可能性を引き出すには至りませんでした。機龍はゴジラになったときと機械の力で強制的に復活させられたときの2度にわたり人間にその存在をねじ曲げられたのであり、茜の自己投影や沙羅の疑念ではとても追いつかない重い存在なのです。『MG1』と『MG2』には初代ゴジラの残留思念とでもいうべきものが1度ずつ映像で描かれます。『MG1』では暴走するときの意識の覚醒を告げるシーンとして、そして『MG2』ではラスト近くで主人公の整備士中條が機龍とシンクロしてゴジラとしての思念が生きていることを悟るシーンとして。しかし『ゴジラ』からの映像の抜き出しのように作られたこのシーンは外からゴジラを見た客観映像であるせいもあり、ここから「ゴジラの気持ち」を汲み取るにはもはや妄想に近いとてつもない想像力が要求されます。このイメージで済ませていられるのはスタッフが機龍という存在の本当の重みを理解していなかったからだと言わざるをえません。

『ゴジラ』において言及されながら、けれど実際の造形では十分描くことのできなかった重大な側面があります。それはゴジラが人間の行為の犠牲者であるという側面です。これはシナリオの次元では十分意識されているのですが、主に昭和29年当時の技術的限界により映像の次元で表現できなかったものです。
 太古の時代から生き延びてきた恐竜が水爆実験により怪獣と化したのがゴジラです。この設定を知らない日本人はいないとさえ思えるほど有名な設定です。しかし、ここにゴジラの「苦悶」を想像する人となると、さてどれだけいるのでしょう。

 実はここが抜け落ちたことがゴジラをして真に戦争の惨禍の象徴となりえなかった点なのだと僕は考えます。準備段階ではケロイド状にただれた体表処理も検討されたそうですから『ゴジラ』のスタッフが人間の所行により苦しみもだえる巨獣のイメージを念頭に置いていたのは間違いないでしょう。水爆の業火と死の灰を全身に浴びて姿形さえ変貌を遂げた生き物が健やかに生きているわけがありません。凄まじい苦悶にのたうち汚染された吐息を吐き散らす、ゴジラの「破壊」とは本来そういうものであったはずです。そして人間の犠牲者としての刻印をゴジラがまぎれもなく体現していて初めて、自らを恐るべき加害者になりうる存在と自覚する芹沢と対になる構図が完成したはずなのです。
 しかし実際の映像ではゴジラの苦しみまでは表現できなかった上に翌年の『逆襲』で戦争のイメージ自体からの切り離しがなされたために、人間の犠牲者という側面は早々と忘れられてゆきます。それによってゴジラの出自は「放射能を浴びてより強力で優れた存在に生まれかわった怪獣」というものとして受け取られることになってしまいました。

 皮肉なことにゴジラの犠牲者としての側面が忘れられて40年以上たってから、ようやく「苦悶するゴジラ」の映像が登場しました。『ゴジラvsデストロイア』のいわゆるバーニングゴジラです。体内エネルギーの暴走により白煙を上げ生きたまま焼けただれていくゴジラの姿は『ゴジラ』にこそふさわしいはずのものでした。しかしシリーズを通じて人間の一切の行為を寄せつけない過剰に強力な存在としてゴジラを描き続けてきたvsゴジラにおいてはもはや意味を持たないイメージにすぎず、ゴジラの死が見せ物として映像化されただけの映画になり果てていました。


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コメント

もも

2020年 09月13日 07:28

ゴジラの映画は続編は作られない方が良かったのかも
リメイクなら良いかも

ふしじろ もひと

2020年 09月13日 09:10

もも様おはようございます。

まあ続きを作ってシリーズに育てたいという作り手の思いは当然あるわけですが、その思いで作った結果にはゴジラシリーズのみならずほとんどの場合その時々の世相が反映するのではないかと思うのです。

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