Epilogue

　天神山自然公園入口バス停を通過すると『レナニア』が見えてくる。赤い煉瓦のドイツ建築のオーベルジュはソラとテラ、叔父上が暮らす我が家だ。
「あ、兄さん、ミライさん、来てる」
　お客様用駐車場に留まっている赤いフィアット・パンダ。
　このクルマの持ち主、どうやら世界の果て、いや、光の国から帰って来たようだ。

「ただいまー！」
　兄弟二人、仲良く声を上げた。叔父上は、セントラルホテルへワインの納品に行っているはずだ。

「テラ君、ソラ君、お久しぶりです」
　レストランの席で、ケーキセットに舌鼓を打っていたミライが振り返った。
「ミライさん、久しぶりー。わあ、日焼けしてるね」
「シベリア鉄道、ポーランド、フランスを回りました。はい、テラ君、お土産」
「わあ、ありがとう。ミライさん、開けていい？」
　頷くミライは、ソラにも土産の包みを渡した。

　ソラとミライの手が触れ合った時、ミライ＝メビウスはゼロに直接、テレパシーで話し掛ける。
“ゼロ、大隊長に呼ばれて光の国へ一旦帰還しました。ここで大隊長から君へ伝言です。
　今、この地球というかけがえのない星の守り手は、ウルトラマンゼロ”
“え…！　メビウス、シャレ言うなよ。オレはオヤジと喧嘩して家出中だぜ。”
“君がこの地球を守るのに相応しい存在である。大隊長、そしてゾフィー隊長以下、ウルトラ兄弟、満場一致での決定です。
　新しい地球の守り手、ウルトラマンゼロ。
　僕はこれから、君のサポートを勤めます。”
“メビウス……”
　ゼロは胸が熱くなるのを感じた。
　一つの星の守り手となるのはウルトラマンの証だ。
　ましてや、かけがえのない星、地球の守り手に、オレが！
“緩んだり弛んだりしたら、いつでも俺達兄弟が喝を入れに行く。……君の師匠である、レオ兄さんからの伝言も、伝えておきますね”
“レオぉっー！”

　ゼロが苦笑するのを見て、メビウスはテレパシーの周波をソラにも聞こえるようにした。
“ゼロ、それからソラ君。最近とある星が武装放棄して、光の国の庇護下に入りました。
　その星とは、ポンプ座にあるポンポス星です。よりによってベルセルク星人に手を出しかけた所、ゾフィー隊長とタロウ教官によって正式な調印もされ、同時に武装放棄も始まりました”
“ベルセルク星人に手を出しかけるって……！”
　感激も引っ込む程、ゼロは呆れた。
“ええ、タロウ教官が言ってました。宇宙情勢にあれだけ暗いのに侵略者になるのは無茶苦茶だと。庇護が間に合ってよかった。冷や汗かいたそうです”
　ゼロもソラも、苦笑するしかなかった。
「さて、では僕は行きます。火の玉ライター、次の取材は、石見銀山で銀を採掘する体験なんですよ」
「気をつけて、また、話をゆっくり聞かせてください」
「ミライさん、行ってらっしゃーい」
　玄関でミライを見送る兄弟。赤いフィアット・パンダと入れ替わりに、年代物のＢＭＷが帰って来た。
「テラ！」
「叔父上ー、ただいまー！」
　ＢＭＷから駆けて来る叔父と甥っ子達。
　家族が、また、揃えた。



エンドロール

スタッフ

原作・脚本
“ネクサス後日談”
ＭＦ
“ＺＥＲＯ Another BALLAD”
綾華☆☆

音楽
平沢進

主題歌
オープニングテーマ
「ヤリタイコト」泉見洋平
エンディングテーマ
「セイレーン」平沢進


キャスト

天河ヨハネ碧宙…泉見洋平
ヨウコ…高橋由美子

天河フランツ大地…ウエンツ瑛士

ウルトラマンゼロ…宮野真守（声）

真柴月夜…湖月わたる
風音沙弥…稲森いずみ
日野枝孝史…山内圭哉

倉澤稔啓…佐々木蔵之介
鈴屋仁美…映美くらら
岩重レオン…松重豊

七浦海翠…檀れい

ポンポス星人ボース…古田新太
ポンポス星人オース…橋本じゅん
ポンポス星人メース…高田聖子
ポンポス星人ドース…粟根まこと
ポンポス星人ミース…山本カナコ

ピット星人…長澤まさみ

ビースト（声）…千葉繁

タクヤ…三浦春馬

ナレーション…嵯川哲朗

日比野未来・ウルトラマンメビウス…五十嵐隼士

アルハイム・Ｈ・マテウス…伊武雅刀

THANK YOU FOR ALL

ＴＨＥ ＥＮＤ





……お・ま・け

　あれから一週間後
「『マザー』から、通信があったわ。気高い異世界の女神が、地球から冥王星まで飛び、次元の門を越えていったと。
　ヨウコさん、行ったのね」
　夢野シティ中心街にある洒落たカフェレストランで夕食を取るウミとソラ。

「大丈夫さ。いつかきっと、タクヤさんの元へ」
「ええ、きっと」
　遥かなる旅人を祝福するため、二人…ゼロも加えて三人…はノンアルコールカクテルを頼み、乾杯した。

　いつか、愛する弟の元へ帰る日が来ることを、三人は願った。

（ちょっとだけ続く……オチです）



＜お・ま・け……オチです＞
綾華☆☆　2011年12月03日10:00

（お・ま・け……オチです）

　ソラがウミを自宅マンションまで届けようと店を後にした時、一ブロック向こうから、怒号が響いた。
「食い逃げだあっー！！」
　夢野シティでは屈指の人気ラーメン屋『天下ムテキ！』から飛び出したのは、そう、あのヘナチョコ侵略者五人組……いや、今やポンポス星は侵略者を放棄したため、難民五人組か。
「カナリーのメシ、ウマかったなあ」
　高菜の壺を抱えて走るオース。
「カレーにさ、肉や野菜がゴロゴロ。もう最高よね」
　紅生姜の瓶を手に走るメース。
「あの分厚いハンバーグ、ああ、素晴らしい」
　胡椒とラーメンソースを手に走るドース。
「キラキラしたお刺身定食、ああ、天国みたいなピチピチ感」
　スリゴマと割り箸箱を手に走るミース。

「……どうするの。ソラ」
“ほっとけよ。ソラ。明日は早いんだぜ”
「俺達Ｂ・ｉ・Ｒ・Ｄは地球の平和を脅かす侵略者や怪獣と戦いますが、食い逃げする自称侵略者までは多分ないと思います」
「そうね。さ、行きましょ。テラちゃんへのお土産のアイスクリーム、溶ける前に、帰りましょう」

　ラーメンの丼を被り走る侵略者のリーダー、ボースが叫ぶ。
「地球を征服した曉には、あの憎っくき真柴リーダーを追放して、あの『カナリー』をワシら専用食堂にするのだっ！」
　年金を保証された楽々な老後に３６５日三度三度の旨いメシ。俄然テンションがスーパーハイになる、ヘナチョコ五人組。

……ポンポス星人達よ。悪いことは言わない。
　楽々な老後にしろ日々の旨いメシにありつくためにも、マジメに働くほうが数段、君達の為だぞ。



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