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　黒い体に白い稲妻模様を明滅させつつ波を蹴立てて進む怪獣。行く手には宵闇に沈みつつも窓からの光をきらめかせる発電所がある。

「各機攻撃。あいつの進路を変えるのよ！」
　真柴リーダーの指示に背後を急襲し、ミサイルや熱戦の弾幕を一斉に浴びせる３機の戦闘機。瞬間、稲妻模様が閃光を放ち白い光に包まれる巨体。弾幕の嵐がその光に触れたとたん、蒸発したかのように霧散する。
「うそ……」
　サヤが絶句したとき、発電所を正面に捉え背をそらす黒いエレキング。背筋に並んだ水晶のような刺の列が虹色に輝き始める。そのとき斜め上空から鋭く旋回し、敵の眼前に回り込むワルキュリア！
「ソラ、無茶よ！」
　真柴リーダーが叫んだとたん、天頂から巨大な光の鉄槌に直撃されつんのめるエレキング。吐き出された熱線に瞬時に蒸発した膨大な海水が、逆流する瀑布さながらに立ち昇る。

「バカヤロウ。おまえの相手はこのオレだ！」
　いまだ変身直後の輝きを身にまとう光の巨人が身構えつついい放つや、さすがに向きを変え威嚇する大怪獣。目のあるべき場所から突き出た鎌のような触角が、回転しつつ若きウルトラ戦士に向けられる。
　視覚の代りにレーダーのような触角の感覚を用いるエレキングの”視野”は全方向をカバーしているため、よほど注意を引くものがないとなかなか隙が生まれない。だから変身の直前、ソラはあえて自機の舵を怪獣に向けて切った上、自動操縦に切り替えたのだ。
　油断なく身構えるゼロの目を通じ、改めて相手の姿を見つめるソラ。直立した黒い体はゼロより頭いくつ分も高く、頭部が長い首の上から威圧するように見下ろしている。その首や鎌のような爪を持つ腕に太い脚、そして体長の優に２倍を越える長大な尾などの側面には黒い表皮の下から金属の強化骨とおぼしきものが露出している。長い尾の中ほどから先はスパイク状の刺を生やしたこれも金属のリングをつなげたような形状を呈している。

”相当強化されてるようだが、離れた相手には熱線、近づく相手には尾の刺と電撃ってところは変わらないみたいだな”
「だったら懐に飛び込んでケリを付けるか？　こんな奴さっさと片付けるに限るぜ！」
　いうが速いか２本のスラッガーを手に走り出すゼロ。そのとき黒い怪獣の背に並ぶ透明の刺が、再び虹色の光を放ち始める。
”来るぞ、ゼロ！”「オレを誰だと思ってる！」
　飛び交う思念すら吹き飛ばさんばかりの熱線を跳躍でかわし、右手のスラッガーで頭上を襲う刺だらけの尾を弾きつつ巨体に肉薄するゼロ。胸元を守る爪を左手で打ち払い、がら空きになった喉元に右上から切り込もうとした瞬間、水と土砂のしぶきの中に叩き伏せられるウルトラ戦士！
「な、なに？」「見えない！　なにも……っ」

　超戦闘機のパイロットたる２人の動体視力でさえ事態をまるで把握できないなか、巨体の体重にものをいわせウルトラ一族の若者の背を踏みにじる黒きエレキング。
「こいつとんだ食わせ者だわ。あの体の補強はきっと手足や尾の瞬発力を極限まで高めているのよ！」
「おのれっ」
　急旋回から放つサヤの連撃も白光を放ちことごとく無効化するサイボーグ怪獣。


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　その様子を暗闇に光を放つ巨大モニターを介し見つめる少女。愛らしい唇に浮かぶ冷笑。旧湾岸区域に残された骨組みのままのビルを偽装した基地に潜む、ピット星人の仮の姿である。
「いいざまね、ウルトラマンゼロ。このハイパー・エレキングを甘くみた報いよ」

　おぼろな光を放つコンソールの上で指先を躍らせるや、画面の彼方でようやく立ち上がったゼロに絡みつく刺だらけの尾。次の瞬間、食い込んだスパイクの先からじかに体内へと打ち込まれる雷撃。煙を吹く全身をのけぞらせて苦しむゼロの体を持ち上げるや、目にもとまらぬ一旋で頭から浅瀬に叩き込む漆黒の機械獣。ようやくほどいた尾を大きくゆらしながら上体を前傾させるや、背に並ぶ刺の列がまたも闇夜を虹色に染め上げてゆく。
「終わりにしてあげる」
　残忍な笑みに唇を歪め、侵略者は光るコンソールに再び手をかざす！