バレンボイムのCDに同じ『悲愴』という標題を持つベートーヴェンのピアノソナタとチャイコフスキーの交響曲を1枚に収めたものがあります。これはベートーヴェンのソナタからチャイコフスキーが単に標題だけでなくその主題も借りていることに注目したもので、ピアニストにして指揮者でもあるこの人ならではの企画ですが、久々に聴くと構造的なコントラストよりも歌謡性のなめらかさを重視するバレンボイムの特質が共通していることをむしろ再認識させられます。
ソナタや交響曲などの曲種で、表情的なわりにドラマチックとは感じにくいところのある彼の音楽性の秘密を垣間見たような気がすると同時に、だから彼はブルックナーの交響曲全集を3回も録音したのかもしれないと思いました。彼の曲はベートーヴェンやチャイコフスキーのようなドラマ性は薄いですから。
バレンボイムのブルックナーはバロック的な構築性というこの作曲家の外見面での作風の特色はむしろ控え目になる一方で、内容的には後期ロマン派的な深刻さや過剰気味のドラマ性とは距離があるというもう1つの特色がより優勢に出ているのがバレンボイムならではの独自性ということになるように思うのです。
少なくとも彼がユダヤ系指揮者であるにもかかわらず、3回もブルックナーの交響曲全集を録音する一方で、いまだマーラーの交響曲については全曲の録音に至っていないのも、そんな音楽性ゆえのことなのかもしれないとも思ったのでした。
コメント
もも
2019年 12月22日 00:05
とっても深いですね
3回も録音するって言う事は
3種類の違いがあるのですか?
ふしじろ もひと
2019年 12月22日 09:11
もも様おはようございます。
バレンボイムの3つのブルックナー交響曲全集は最初のものが1970年代、2回目が90年代、最新のものが2010年代とほぼ20年ごとに録音されています。特に最初のものはそれまで9曲のうち後半の4~5曲くらいしか録音されなかったブルックナーの交響曲が全曲録音されるようになりはじめた最初のグループに属するもので、まだLP時代だったころにそれらが店頭に出てきたワクワク感を覚えている僕としては懐かしいセットです。
同じ曲でもこれだけ間があくと解釈を大きく変えてくる演奏家もいるのですが、バレンボイムはあまりそういう変化を見せない人で、この3つのブルックナー全集も根本的な解釈には違いがありません。ただやはり培われた経験の差というべきか、最新のものはさすがに最も無駄がなく見通しの良さを感じさせます。
もも
2019年 12月22日 16:47
そういう聴き方ってやっぱり奥が深いですねー
ヘッドフォンの方が良いのかな?
ふしじろ もひと
2019年 12月22日 18:31
クラシックの場合、本来は演奏会場で聴く音楽ですから、音が主に前からくる(ホールの場合は壁からの反響もあって響きに包まれる面もありますが)スピーカーの方が聞こえ方は自然ですが、特にオーケストラ曲の場合はある程度音量を出せないと弱音部分が聞こえにくくなるので、住環境によってはヘッドフォンのほうがいい場合もあります。
Yoshi
2019年 12月26日 12:45
クラシックは落ち着く一人掛けのソファーに座って
目を閉じて ヘッドフォンで聴くのが好きです
これ ボクにとって 最高の時間なんです~♪
ふしじろ もひと
2019年 12月26日 22:18
Yoshi様こんばんは。クラシックお好きなんですか? 嬉しいです♪
なにしろ汗かきなのでヘッドフォンは冬場しか使えないという体質的な問題があるのですが、今の時期は寝しなにPCで配信サービスのナクソス・ミュージック・ライブラリーなどヘッドフォンで聴きながら寝てたりしています。なんというか幸せです♪
あと最近凝ってるのがいつの間にか溜まってしまったミニコンポなどの安物スピーカーを二組組み合わせてTVの後ろに置き、スピーカー同士の欠点とTVの後ろという環境が相まって結果的にTVの前にはバランスがとれた音になるような鳴らしこみをカットアンドトライで試すこと。ミニコンポ本体はすぐ壊れるのにスピーカーはなかなか壊れないので廃品利用で再利用しているのですが、DVDプレーヤーはブルーレイと異なりHDMI端子とアナログ出力端子の両方が付いているのでTVにはHDMIで映像と音声を流し、アンプにはアナログ出力の音声を流すことができるので、TVを消してDVDプレーヤーとスピーカーだけで音楽を満足いくバランスで聴けるようにしているのです。すでにいくつか満足のいく組み合わせを作れていてこれまたとっても幸せです♪