ブルックナー交響曲全集のプロジェクトを３度収録したバレンボイム（朝比奈にも３つの全集があるが、ビクターとの２回目は当初からプロジェクトとされていたのかが不明な寄せ集め）のシカゴ響との最初の全集を久々に聴く。

　歌い回しが非常に声楽的でバッハ的な構築性が乏しいが、『詩編第１５０篇』『テ・デウム』『ヘルゴランド』の３つのオケ付き合唱曲を収録していることを思えば、それが彼の自覚的なアプローチだったようにも思える全集録音。
　ブルックナーは自分が最後の交響曲となった９番を完成できずに死ぬことを悟ったときに、９番のあとに『テ・デウム』を演奏できるよう移行句の作曲にかかったものの完成できなかったといわれているが、朝比奈が実際に両曲を取り上げたライブ盤と同様この全集もその組合わせを再現できる稀有な録音である。

　なおその後のバレンボイムのブルックナー全集は、２回目では『ヘルゴランド』のみが併録されており３回目では交響曲のみの収録となっているので、交響曲そのものに対するアプローチにも何らかの変化があるか確かめてみたいとも思う。