今のアジア太平洋戦争関係の本には、旧日本陸軍と海軍の不仲が繰り返し書かれているものがあります。アメリカ軍をおびき寄せるため、陸軍を海軍がおとりに使ったこともあったわけです。その戦争の前は政治家や財閥の対立。つまり、日本人としての仲間意識よりも、所属関係の仲間意識が強かったわけですね。明治は四民平等を推進するため、日本人としての仲間意識が強調されましたが、実際は狭い仲間意識が優先された。さらに、その陸軍内とか海軍内はどうだったのか。仲間意識は持ちつつも、朝鮮系の人たちは差別されたのは言うまでもないし、アイヌ、琉球、部落系の人たちも差別され続けた。仲間意識と差別意識は別ですね。仲間意識は差別を消しません。仲間意識主義は終戦で終わったはずです。ところが戦後も残り、統合教育して仲間になれば差別は消えるという運動も１９８０年ごろはあった。その結果の一つである、公立学校でひどくいじめられた精神障碍者の声も聴きました。
　内村鑑三は特に仲間意識を重んずる一キリスト教派とケンカしましたが、何もその教派に限らず、仲間意識を重んずるのは当時の日本人の考え方だったようです。仲間意識を批判的に見ない限り、差別否定どころか、個人間の友情も、恋愛も生まれないわけです。孤独地獄になりますね。