ふしじろ もひとさんの日記

2022年 02月15日 00:07

『史上最低の侵略』57MF

(Web全体に公開)

『史上最低の侵略』その57
MF

take-57

December 7th 15:00

「おい、工学部の新しい講師見た?」
「見た見た。白髪でグラサンでしかも双子!」
「受け持ちはロボット工学だろ? だったら一人はロボットじゃねえの?」
 夢野市立大学キャンパスにちょっとした話題を巻き起こしているのは、もちろん双子のサロメ星人たちだ。偽名で教壇に立つ身となった彼らは、小はお掃除用途のロボット家電から大は二足歩行の重機タイプに至るあらゆるロボット作成実演講座を受け持っていた。若白髪に決して外さぬサングラスといういでたちもさることながら「まねるのを恥じるな。超えられぬことを恥じろ!」をモットーとするその講座は実に熱血かつ体育会系ノリの著しいものだったが、そんな彼らが八百屋でしぶとく値切っている姿が目撃され、しかも二人揃ってなぜかカレーが大嫌いということもあっという間に知れ渡り、それらのギャップゆえにわずか数日で学園きっての名物講師に祭り上げられていたのだ。そして今日も講義を終えた彼らはこの数ヶ月ですっかり手になじんだ買い物籠を下げ、ガラクタもいくらか減り始めた街へと繰り出したのだったが……。

「うわあっ!」
「で、出た!」
 商店街への角を曲がったとたん、忘れようにも忘れられぬあの五人組にぶつかりそうになって慌てて跳び退く双子たち。だが相手はまるで気づいた様子もなく二人の間を駆け抜けるや、曲がり角の向こう側の紐のついたつっかい棒で持ち上げられた籠の下に転げ込むなり置いてある握り飯を我先に頬ばり始めた。とたんに紐が引かれて落ちた籠に跳びかかり総出で押さえ込むテレビ局スタッフたち。ここから出せと喚くわ暴れるわの五人組だったが、取材に協力すれば握り飯を追加すると持ちかけたディレクターの言葉にたちまちおとなしくなり、皆で籠を被ったままスタッフに導かれ去っていった。
 あっけにとられただ見送るばかりのサロメ星人たちだったが、やがてドリアンが思いあぐねたように口を開いた。
「……兄者、今のは一体?」
「ドリアン、忘れよう……」
「ああ……、そうだな兄者」
 こうして二度とかの貧乏神どもとかかわりたくない双子たちはこの出来事を無理矢理なかったことにして頭から追い出しつつ、手強い店員たちとの値切り合戦へと赴くのであった。


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「ですから観念して答えて下さい。どうして侵略者のロボットが防衛隊員のあなたの姿をしてたんです?」
「だからなにも知らんねんて! 何遍いうたらわかるんや」
 今日もタカフミが街中で報道陣に取り囲まれて弱り果てていると、大きな籠を被ったご一行が連れられてきた。嫌な予感は的中し、籠の下から現れたのはタカフミをこの窮地に陥らせた張本人たち。たちまちアニキアニキと連呼しつつ縋りつくヘタレ侵略者たちを、タカフミは頭から怒鳴りつけた。
「アホんだら! この始末どないしてくれるねん!」
「まあまあ、やっと探し出せたんですから。ではこちらの方々に伺いましょう。なぜあなた方は敵である防衛隊員に似せてあんなロボットを作ったんですか?」
「よくぞ訊いてくれた! すべてはアニキ様にB・i・R・Dの隊長になっていただく作戦だったのだあっ」
 握り飯のおかげですっかり口の軽くなったボースがふんぞり返り、タカフミは思わず頭を抱えた。その間にもボースの話は留まるところを知らず、いかに真柴リーダーが邪悪かつ冷酷であり、タカフミがどれほど慈悲深く、カナリーの飯がどんなに美味であるかを縷々語り続けていた。食事の場面では感極まった部下たちの合いの手も加わって、いったいB・i・R・Dではどれほどの予算が贅を尽くした美食に蕩尽されているのかというほどの話に化けていた。
「こうしてワシらはアニキ様の手柄を世に知らしめるべく、ロボアニキで偽者どもと戦ったのだぁあっ!」
「つまりあなた方は一隊員の野心につけ込んで、彼を自分たちの傀儡となすべく分断工作に及んだというわけですな」
「ま、待たんかいな人聞きの悪い! それやと俺がモロに悪党やないか! こんなん放送されたら帰られへん……」
「その方が面白いじゃないですか。第一これは生中継ですが」
「ウソおぉ~~」
 顔面蒼白となったタカフミの見開かれたその目には、いかなる異星人の超能力も及ばぬ鮮やかさで真柴リーダーの顔が視えていた。それは一見にこやかな笑顔だったのだが……。


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「随分いってくれるじゃないポンポスったら。タカフミもこんな連中とつるんでいたなんて……」
 がらんとしたミッションルームでモニターを見つめる女隊長。その顔はまさにタカフミの心眼に映じたとおりの笑顔だったが、こめかみに走るただ一本の青筋がそれをこの上もなき凶相へ一変させていた。魔界の匠の絵筆の冴えさながらのその恐ろしさに、今の今までこの場にいた者は一人残らず逃げ去ったのだった。



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コメント

もも

2022年 02月15日 01:17

逃げますねー

ふしじろ もひと

2022年 02月15日 02:18

もも様こんばんは。
なにせウルトラマンでさえ逃げ去るというこの事態に、誰一人なすすべがなかったのです(大汗)

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