ふしじろ もひとさんの日記

2022年 02月12日 01:12

『史上最低の侵略』54A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その54>


take-54

December 1st 23:30

「……うっ! こ、ここは?」
 声に白衣の背中が振り返った。
「よかった。ソラ、意識が戻ったな」
 振り返ったのは医療部のリーダー湊ドクターだ。アリーナでは最年長の65歳。小柄だが矍鑠とした大ベテランだ。
「全く君も大変だったな。あれだけのガラクタの山に埋もれるとは」
「はあ。覚えているのは凄い震動と、巨大な何かがすぐそばをかすめて……」
「ついてたなソラ。すぐに気絶したことが君を助けた。グレイ・ハウンドの車体が君を守っていたが、もしパニックを起こしていたりしたら、あのガラクタの沼で酸欠で命を落とすところだったぞ。
 君がグレイ・ハウンドごと埋もれていたのを、ゼロが助けてくれたんだ。あのままガラクタの山に埋もれていたら、やはり酸欠で死んでいたはずだ」
 起き上がろうとするソラを制して、湊リーダーはソラの手の甲に貼り付けた針を経由して、採血をした。
「とりあえずソラ。今日はしっかり休みなさい。他は異常なし。ただ、こんな所にタンコブがあるのが解せんが」
 湊医療部リーダーが軽くポンポンと叩いたのは、ソラの左側頭部だ。
「グレイ・ハウンドは右ハンドルだから、普通は右を打撲するはずだが……。まあいい。叔父上様とテラ君には、サヤが連絡しているからな。おやすみ」
 それだけ言うと、湊リーダーは部屋の灯りを消し退室した。

 枕元には、父の形見であるブライトリングナビタイムが置かれている。手元のライトで時計を見ると、日付も変わろうとする時間だ。すると。

“ってえ! 何だったんだ。ありゃ?”
“ゼロ?”
“……ん? ソラ! 何が俺に任せろだよっ! 勝手に寝やがって!”
“……すまない”
“ったく。偽のオレに偽のセブンなんて趣味悪いモノ造りやがって! お前が気絶しなけりゃ偽物なんぞぶっ飛ばして……”
 ゼロは気づいた。ソラが何か、それは気まずそうにしていることに。
“何だよ。ソラ? 別にオレはお前が戦闘中に寝たくらいで腹を立てたりしねえって。夕べワンワン泣いてたから、疲れたんだろ。……そりゃまあ、ちょいムカついたけどな”
“……ゼロ。君、ホントなのかい? その、君の、お父さんが、あの、セブン……?”
“なんだよ。ソラ。オレがオヤジの倅だと何か都合でも悪い……だあっ! まさかオレがオヤジの子だってんのが、気にくわねえとかいうんじゃねえだろうな?”
“気にくわないなんていってない! でも、ホントなのか?”
“やっぱり気にくわねえじゃねえかっ! オレは木の股から生まれて当たり前とでもいいたいのかよっ!”
“そんなこといってないだろっ!”
 かくして一つの体の中で大喧嘩を始める二人の若者……。


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“……ソラ。これだけは言っとくぜ! オレにとっちゃオヤジは長らく他人だったんだ! いきなり他人が、しかもすげえ英雄がオヤジなんて言われて、オレはかなーり傷つきもしたんだぜっ!”
“………”
“お前のオヤジみたいにいつも側にいてくれて、最期には命まで投げ出して息子を守る、そんなんじゃなかったんだっ!!”
“……君”
“お前のオヤジ、なんであんなに優しいんだよ! お前だけじゃねえ。テラにもっ……”
 ゼロは地球について知るためソラの記憶を垣間見た時、驚いたのだ。ソラの父は、なぜこんなにもあったかで、優しくもあり、厳しくもあったのかと。
 辛抱強く子供達を見守り、導いていた。泣き虫のソラに自信をつけさせるためフルーレを渡し、まず共に手合わせをした。進路に迷うソラをガミガミいうことなく諭し叱り、同時に励ましもしていた。
 テラのウルトラマンとして努力するソラを、じっと見守ってもいた。
……父と子の、信頼に裏打ちされた日々。
 ゼロにはそれが羨ましい限りだったのだ。

“………ゼロ。すまない”
“オレなんかがオヤジの倅で、さぞガッカリしたかよっ”
“前にミライさんが教えてくれた。ウルトラマンとて、神様じゃないって。普通に家族があって、時にはうまくいかなかったりもあるんだな……”
 ゼロは気づいた。ソラが同情しているわけではないことに。あるがままの自分を受け入れようとしていることに。
“ソラ、お前……”
“君を散々ムカつかせたな。泣き虫の弱虫な能書きタレって”
“ソラ? その、あのな”
“俺が勝手に崇拝してたんだな。イメージを膨れ上がらせて”
“………”
“許してくれ、とはいわない。ただ、君がどうするかは任せる。もっといい相棒を見つけたければ”
“待てよ。何いってんだよっ! こんな面白い相棒、そう簡単に見つからねえだろっ!”
“ゼロ……?”
“ま、ソラ。これで秘密はバラしたからな。これからも”
 ソラの右側頭部に一発、ガツン! ときて、目に星が瞬く。
“よろしくなっ!”


 かくて気絶していた二人の若者は、その代償として互いをより深く理解するに至った。そしていま、同じく昏倒していた敵方の二人も目覚めようとしていたのだった。



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https://www.alldesu.com/diary/79187




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https://www.alldesu.com/diary/79149

コメント

もも

2022年 02月12日 01:53

仲直りして良かったですね

ふしじろ もひと

2022年 02月12日 02:39

もも様こんばんは。なにしろここまでいろいろあったコンビですから。

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