ふしじろ もひとさんの日記

2022年 02月11日 00:37

『史上最低の侵略』53MF

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その53>
MF

take-53

December 1st 16:00

 いまだ意識が戻らぬ双子のサロメ星人から視線を中空に移し、やがて呟くダークスーツ姿の夢野市市長。
「ふむ、いけませんね。それはまだ君たちには早すぎるオモチャです」
 いいつつ両腕をゆっくりと正面に突き出すと、拳が次第に青い光に包まれる。やがてゆるやかに両腕を頭上へ掲げる老人の姿の異星人。すると……。


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「うわあっ!」
 瓦礫の上で横たわっていたサロメの偽戦士たちが硬直したままゆっくりと宙に浮き上がり、転がるように跳び退くレオン!
「危ない! 下がって!」
 背後にレオンたちを庇いつつ、威力MAXのブラスターを構え牽制する真柴リーダー。だが超合金の巨人たちは固まった姿勢のままゆるやかに上昇を続け、やがてガラクタの地平線に沈みゆく夕日と入れ替わるかのように暮れゆく空へと飛び去っていった。ゆっくりと構えを解く真柴リーダーに、高嶺リーダーが問いかける。
「逃げたのでしょうか? サロメ星人とやらは」
「……そのようね。でもあれだけのロボット相手に深追いは禁物だわ。アリーナ経由でルナやスペーシーにも監視を依頼。ただし手出しは絶対しないように」
 いいつつ向き直った女隊長を、熱っぽいまなざしが、上気した顔が出迎える。
「ツクヨさんかっこいい! まるでワルキューレみたい!」
「な、なによテラちゃん照れるじゃない。さあ食べさせてあげるからあーんして……」
 その美貌を夕日顔負けの朱に染めたテラの妖精女王が照れ隠しなのか何なのか、素直に口を開けたテラにちぎったサンドイッチを嬉々として与えるその姿に、レオンはおろか連絡を終えた高嶺リーダーまでもがB・i・R・Dグラムを切るのも忘れて立ち尽くしている。そこへロボットたちが飛び去った映像をコクピットユニットから転送したヒトミがやってきて、目が点状態のレオンたちを不思議そうに見ていたが、やがて二人だけの世界に入り込んでいる歳の差カップルに視線を移すとうらやましげにぽつりと呟く。
「いーなぁ……」
 その声にやっと我に返ったレオンたちが、そんなヒトミの腕を掴むと口々にいい聞かせる。
「わ、忘れなさいヒトミ! これは三人だけの秘密ですよっ」
「誰にもこんなこと話しちゃいかん。特にソラには絶対に!」
「えー? どーしてどーして??」
 そんな騒ぎにも、勝者なきガラクタの荒野に愛の花を咲かせた二人はまるで気づきもしなかった。だからゴミの山のふもとから自分たちを見上げるまなざしになど、気づける道理があるはずもなかった。


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「で、出たあ!」
 見事にハモりかけた自分たちの声にあわてて口を押さえるポンポス星人五人組。なにしろ夢野シティの全住民に巨大タカフミが手柄を立てる現場を目撃させ、その動かぬ事実で真柴リーダーを追い落としタカフミをB・i・R・Dジャパンの隊長に据えるという完璧な計画がなぜか崩れ去ったことを、破滅の大邪神としかいいようのない残忍無比な女戦士の姿が証立てていたのだから。しかも誰かに何か食べさせている! ここで見つかれば今度こそ唐揚げにされると思った昆虫人間たちは磨き抜かれた逃走本能にものをいわせ、ゴミに埋もれた大地を地平線めざして走り去ったのだ。自分たちのせいで恩人がアリーナで責められていることも知らぬまま。


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「タカフミ、いいかげん納得のいく説明をしたまえ! なぜあれは君の姿をしていたのだ?」
「知らんわ補佐官、信じてぇな。俺はホンマに知らんねん!」
 哀れなタカフミが光成補佐官に追求されているミッションルームへ、連れ帰ったソラの手当を終えた倉澤チーフとサヤが入ってくる。
「円谷は出遅れたようですね。ご自慢のセスナが整備中だったとかで、デカブツが立ち上がった後しか撮れなかったようです」
「もうあれ、すっかり注目の的よ。偽ゼロなんか完全に霞んでるし。ここから出たら最後、マスコミの餌食は間違いないわ」
 頭を抱え机に突っ伏すタカフミを後目に、光成補佐官が問いかける。
「ところでサロメ星人の消息は掴めんのか。たとえ地球から逃れたとしても、正体は探らねばならんのだが」
 でしたら、とサヤが答える。
「ポンポス星人に訊くのが一番だと思います。直接会ったことがあるのは間違いないですし、随分と因縁もありそうですし」
 思わず固まるタカフミの頭上を通り過ぎる声また声。
「それならタカフミを行かせるしかありませんね。彼、連中には懐かれてるようですから」
「補佐官がお尋ねの件も確かめられることですし」
「で、でも一歩でもここから出たらって……」
 身を起こしおずおずと訴えるタカフミだったが、補佐官の言葉は非情だった。
「このさい毒食わば皿までだ。行ってきたまえ」
「お~~た~~す~~け~~!!」
 かくてタカフミの悲鳴は基地全体に響き渡ったのだった。



take-54 →
https://www.alldesu.com/diary/79171



← take-52
https://www.alldesu.com/diary/79134

コメント

もも

2022年 02月11日 02:32

一件落着ですね

ふしじろ もひと

2022年 02月11日 02:57

もも様こんばんは。
そんなわけでサロメ双子の身の振り方もじきに語られることになります♪

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