ふしじろ もひとさんの日記

2022年 02月09日 23:35

『史上最低の侵略』52A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その52>


take-52

December 1st 15:30

「レオンりん。ソラりんのピア・フォンの反応。……すごく近いんだけど」
「これだけのガラクタに埋まっては……。いや、あれは?!」
 B・i・R・Dエッグδでソラの反応を探していたヒトミとレオン。偽インペライザーが旧湾岸通に出現してから掴めなかった生態反応が再び確認されたため、捜索に出ていたのだ。
 そして前部席で操縦するヒトミも後部席にいるレオンもそれに気づいた。B・i・R・Dジャパンの最新鋭特殊戦闘車輌『グレイ・ハウンド』だ。
 そして、ソラのピア・フォンからの反応も!

 そこへ一旦アリーナへ帰還した真柴リーダーとサヤも、同じく二機のB・i・R・Dエッグで帰ってきた。
「グレイ・ハウンド! どうしてこんなところに?」
「サヤ。ゼロが力つきる間際、このガラクタからなかなか出てこなかったのは、ソラを探していたからじゃないかしら」
「そうですね。普通ならすぐガラクタから飛び出すはずなのに、長い間潜ったままでしたから」
 そんな話をしながらも、ガラクタの荒野に降下してゆく希望のツバサのコクピットユニットたち。さすがに本体では大きすぎて場所塞がりなためだ。
 サヤの操縦するβの後部席には、倉澤チーフもいる。

 慎重にガラクタの上に着陸した計三機のコクピットユニット。サヤが通信でソラに呼び掛けているが応答がないため、レオンが曲がっているドアを焼き切ることになった。
 固唾を飲む時間が続いた後、ようやく運転席側のドアがこじ開けられ、ソラの姿が見えた。
「ソラ! しっかりしなさいっ」
 サヤがシートベルトを切って、昏睡しているソラを引っ張り出す。
「いかん。埋もれていたせいで酸欠状態だ!」
 倉澤チーフが医療ケースを開き、酸素マスクをソラの顔に当てる。ただちにサヤがアリーナへ救急搬送車輌を要請する。
 やがてホバー機能を駆使し急行してきた救急搬送車輌。担架に載せたソラを搬送する支度を始める救護班。

 そこへ調査車輌『ジェリクル・キャット』が降りてきた。降り立ったのは高嶺科学分析部リーダー。そして
「サヤさん! 兄さんはっ?」
 バスケットを手にしたテラが、飛び降りてきた。
「兄さん!」
 テラが昏睡するソラに駆け寄る。
「大丈夫だテラ君。軽い酸欠だ。まだ意識はないがすぐ手当てをしたから大丈夫! だから」
 兄の体を揺するテラを引き離そうとした倉澤チーフだったが、テラはなかなか離れようとしない。だが、
「テラちゃん。ソラなら大丈夫よ。B・i・R・Dの医療技術が地球一なのは知ってるでしょ」
 テラの肩を擦りながら呼び掛けるのは、
「あっ、ツクヨさんっ!」
 そう、B・i・R・Dジャパン最高責任者である、号令にしてアタックチームリーダー真柴月夜。テラのタイターニアだ。
「今はチーフやメディカルセンターに任せるのが一番よ」
「でも……」
 テラは眠り続ける兄を見つめる。
「大丈夫よ。テラちゃん。……あら、それ、もしかして?」
 真柴リーダーが、テラが右手に提げたバスケットに気づく。
「うん! ツクヨさんのために作ったお弁当だよっ」
 満面の笑顔でバスケットを差し出し蓋を開けたテラだったのだが……。

「あらあら……」
 テラが振り回してしまったバスケット中のサンドウィッチは、どれもこれも藤のケースから飛び出していた。
「……ごめんねツクヨさん。崩れちゃった」
「ううん。いいのよテラちゃん。……ん、美味しいわぁ!」
 型崩れしたBLTサンドを頬張って微笑む、テラにとっての妖精の女王。
「ホント? 美味しい?」
「テラちゃんが作ってくれたものなら、蝮の蒲焼きでも、蛙のステーキでも美味しいわよ」
「僕、そんなの作らないよぉ」
 かくてガラクタの荒野に咲く、愛の花……。
 倉澤チーフと昏睡するソラを乗せた救出車輌がガラクタから浮き上がりアリーナを目指したことすら、もはや二人の目には入っていなかった。そして隣で話す二人のことも……。

「レオン、明日が楽しみですね」
「ええ、こんな凄いモノが手に入るなんて!」
 レオンの右手が叩いてみせたのは、偽ゼロの拳であった。高嶺リーダーの第一報を受け急遽ボンとラスベガスの両技術部から、明日スタッフが調査のため派遣されると決まったのだ。


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 かくしてようやく先程の騒ぎから日常に戻ろうとしていた夢野シティ。その市役所の市長室では……。
「日当は給与規定どおり。交通費なし。ただし皆勤手当はあり。夜勤者には法定通りの割増し賃金。それから給食に仕出しを。仕出し先は……」
 端末に求人情報を打ち込んでいる筆頭秘書。そして……。


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 市民病院の滅菌隔離病棟の特別室。
 ダークスーツを隙なく着こなした老人が、栄養剤の点滴をぶら下げたベッドでうなされている鏡合せのような白髪の青年たちを見守っている。いかなる目覚めの兆候も見落とすまいとするかのように。

 だが、その視線がふと二人を離れ、中空に向けられた。



take-53 →
https://www.alldesu.com/diary/79149



← take-51
https://www.alldesu.com/diary/79114

コメント

もも

2022年 02月10日 02:55

二人は助かったんですね

ふしじろ もひと

2022年 02月10日 05:37

もも様おはようございます。
どうにかこうにか助かりました。

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