ふしじろ もひとさんの日記

2022年 02月05日 23:46

『史上最低の侵略』48A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その48>


take-48

December 1st 13:30

「ゼロの、お父さんが、セブン?」
 カマエルのコクピットのサヤが思わず繰り返す。
「嘘でしょ?」
 ワルキュリアの操縦席で絶句する真柴リーダー。
「マジかっー?」
 バロンのコクピットで魂が抜けかけていたタカフミまでもが、衝撃の事実に反応する。

“……へっ! 言わなかっただけだぜっ!
親の七光りなんざ、真っ平ゴメンだぜっ……っとおっ”
 坊主頭の偽セブンと偽ゼロからのエメリウム光線をかわし、横へ跳ぶゼロ。
 そんなゼロや偽セブンや偽ゼロの頭を押さえるように聳えるのは、マジンガーZでもガンダムでもない。テープの回転が狂った六甲おろしを喚き散らす、いつ崩れてもおかしくない巨大なガラクタだ。
“来るぜっ! ……ソラ、どうした?”
 だが、相棒たるソラは答えない。
“おいソラ! 俺に任せろはハッタリかよっ!”
 偽物たちに接近されないよう注意を払いながらも、ゼロは気づいた。ソラが普段の冷静で理性的な彼ではないことに。


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“マジかっー!!?”
 ソラの頭の中では、品行方正な彼にはあまり似つかわしくないこの言葉がグルグル巡りをしていた。
 まだ自分が大学生だった頃、報道映像円谷プロが発表したスペシャル限定DVD。
 その名も『私達が愛した仲間 ウルトラセブン』
 ウルトラセブンの地球での最後の戦いを偶然記録していた、当時のアマチュア映画監督、そして今や主に怪獣報道映像を自ら愛機で駆けつけては記録する報道映像作家、円谷英二の出世作。
 丹念に記録を辿り、貴重なアーカイブ映像を入手し、ひいてはウルトラ警備隊日本支部の女性戦士を除く全員にインタビューをしたDVDは、科特隊自らの手になるがゆえに身内意識に満ち満ちた『ウルトラマン』には見られなかったハードかつシリアスなテイスト溢れる一大ドキュメンタリーであり、それゆえにテラのウルトラマンたるソラのバイブルとなったものだったのだ。
 英二がバイト先の映画会社からくすねてきたフィルムを使って撮影した、ウルトラセブンの地球最後の戦いの真実。ぶつ切りで編集された普通のニュース映像ではない。アマチュア映画監督円谷英二が渾身のカメラを回して収めた真紅の英雄最後の戦いが、そこには全て記録されていたのだ。
 表情の変化が解りづらいウルトラマンとて、ソラにも理解出来た。
 セブンはもはや立つことすら難しいほど累積した疲労と負傷に喘ぎつつ、史上最大の侵略に、ゴース星人が送り込んだ改造パンドンに死力を尽くし立ち向かっていた。その姿にソラは涙が止まらなかった。
 そして、ウルトラ警備隊の仲間達が語る真実。
 死力を尽くし、僅かに残る闘志だけで強大な刺客に立ち向かうセブン。彼が守りたいモノ。
 それは、地球という星。そして、共に戦った仲間。
 ゴース星人に捕らえられた仲間を救わんと、セブンは死地へ、もはやパワーも尽きかけた状態で戦いに赴いたのだ。最後の戦いになることを自身も覚悟の上で。
……そんなセブンは、ソラにとって永遠の憧れでもある。いまゼロと共に勇者を目指す長く苦しい試練に耐えて戦っていられるのも、セブンへの憧憬があればこそだ。

 憧れの英雄、ウルトラセブン。
 その彼に子供がいても不思議ではない。だが、だが! まさかであった!!

 両親と育った家を失うほんの少し前、寒風山で流星群を見ていたソラとテラの前に現れた、ブラックキング。
 弟を守ろうとブラックキングを挑発し遠ざけようとしたソラに限界がきた時、足を捻って動けぬソラとブラックキングとの間に立ちはだかった、光。
 それは、若く新しいウルトラマンだった。
 ウルトラマンに傷つけられたブラックキングの巨大な手に、ソラは弾き飛ばされ瀕死となった。そのとき、若きウルトラマンは呼び掛けてきたのだ。
 地球を案内してくれ。と。
 ソラはその申し出を受け入れた。
……だがこの新しいウルトラマン、なんとも未熟で危なっかしいのだ。頭に血を登らせたあげく、取り返しのつかぬ失敗を犯したことさえあった。
 元々テラの兄であるソラは、根っからのお兄さん気質だ。
 やっぱり、俺が、しっかりしてないと。
 共に戦っていながらも、ソラにはまだまだそう見えてしまうゼロ。その姿は導きの星として心に焼き付けてきた高潔なる真紅の英雄の成熟した姿とはあまりにもかけ離れたものだったのだ。

 そんな血の気の多い、まだまだ青臭い相棒が、よりにもよってウルトラセブンの息子?!
……うっそおっーーーっ!


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「……喧嘩ね」
「ホント、ガキの喧嘩」
「アホやなあ」
 希望のツバサのコクピットで呆れ返る三人の耳に入ってくる、偽セブンと偽ゼロによるマイクパフォーマンスは、とうにそうとしか形容できぬレベルに堕ちていた。
『おのれ光の国のヤンキーめ!』
『達者なのは逃げ足だけかっ!』
“けっ! うっせえ!!”
 聳えるデカブツから落ちるガラクタをかわしつつも数で勝る難敵に隙を見せぬよう、ゼロは身を翻しながら反撃の機会を伺っていた。だがよりにもよってその瞬間、叫びと共にブラックアウトするソラの意識!
“……うっそおっーーーっ!”
“だあっソラ! こんな時に寝るんじゃねえっ”
 だがもはや応えはなく、ゼロの体が一気に重くなる!



take-49 →
https://www.alldesu.com/diary/79070



← take-47
https://www.alldesu.com/diary/79032

コメント

もも

2022年 02月06日 00:14

手早く片付けて欲しいですね

ふしじろ もひと

2022年 02月06日 00:54

もも様こんばんは。
なにせ史上最低と名付けられるだけあって、とうてい手早くとはいかないんです……(涙)

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