ふしじろ もひとさんの日記

2022年 01月20日 00:39

『史上最低の侵略』32A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その32>
MF

take-32

NOVEMBER 8TH AM 13:18

 剣呑なメイスで骨と言う骨も生命機能を司る臓器も、等しく致命的に叩き潰されたビースト。
 もはや自慢の不気味なまでの再生力すら、発揮出来ないほどの損傷だ。
 そして最高の糧である恐怖を全く味わえないどころか、逆にビースト自身が一つの体の二人に、恐怖に支配されていた。

 ビーストとの戦いでは、ただ単にダメージを加え続けるのではなく、相手より精神的に優位に立ち、そして恐怖を感じさせることこそがとどめの一撃にもなることを、ゼロとソラはビーストエレキングとの戦いで学んでいた。いわば毒を持った生き物が、自らの牙の毒とて血液に回れば致命傷になるのと同じだ。恐怖を食らい膨れ上がるビーストゆえのそんな特性を、ソラは利用したのだった。

 ゼロスラッガーを変化させたモルゲンスタイン付きのメイスでビーストの顎を持ち上げる、ゼロの姿のソラ。そのままアッパースウィングの要領で、また一撃を加えていく。
“相手が悪かったな! 世の中には絶対に本気で怒らせてはいけねえ相手がいることを、お前は知らなかったようだな!”
 ソラの姿をしているゼロが、鼻の下を擦る仕種をしながらビーストに叫んだ。

 ソラは優しくあたたかい。クールで知的で、かつ絶対に諦めない、土俵際からの逆転を狙い、それを実践できもする。
 だが、ゼロは気づいてもいた。
 ソラは絶対に、本気で怒らせてはいけない人間だと。

 ソラは感情のコントロールが、ゼロより遥かにうまい。それだけにコントロール不能になった時が、恐ろしいのだ。
 いや、それは半分しか正しくない。
 ソラはいわば、炎のような存在だ。
 普段は人をあたため光を与えるが、ひとたび激怒すれば、それはまさに禍つ火となる。しかもそれは、臨界した巨大恒星の一呼吸にも匹敵する激しさだ。
 ゼロはソラを怒らせることはしばしばあるが、それでも本気で怒らせるヘマはすまい、と決めている。

 それがゼロの戦い方に、新しい進化を成していた。
 以前のゼロなら、もっと力だけで攻めて、それで勝てると思っていた。それ故に、ソラと共にとんでもない過ちを冒しもしたのだった。
 今のゼロには当たり前の、周囲を見渡す冷静さや最小の被害ですむよう戦場を拡張しないことなども、当時の彼には無縁のことばかりだったのだ。

“さてとソラ。ここらで一発ホームランと行こうぜ。ぼちぼちオレも疲れたからよ”
「そうだな。ゼロ」
“じゃあソラ。まずはだな。メイスを右手で、地面からグルッと輪を書いてだな”
 ソラも理解したらしい。ゼロが期待する動きを一通りしてみせて、ゼロとソラは同時に歌った。

♪みんなで 笑えば すてきな ホームラン!♪
 イチロー式のスウィングでかっ飛ばしたゼロ……ならぬソラの一撃は、甲子園球場のバックスクリーンまで飛んでいくような会心の当たりだった。希望のツバサでの出撃の帰りに、毎日のようにタカフミが聞いているのは『六甲おろし』と『レッツゴートラッキー!』だ。ソラもゼロも、イヤでも覚えてしまっていた。
 ゼロの力を持つソラの特大ホームランで首を叩き砕かれ、さしものビーストもついに絶命した。策に溺れたのは自分だと、最後の瞬間思い知らされつつ。そんな敵を、ソラはゼロの感覚を利用して、戦う間ずっと目を閉じながらも感じていたのだ。

 ビーストの生命活動が停止した瞬間、突風に流れる霧が晴れるようにダークフィールドは消滅した。
 肩で息をするようなゼロと、醜悪な肉塊となったビースト。ソラはすかさず海に向き合うようにビーストの左手に飛び、最後の力を振り絞ってワイドゼロショットを叩きこんだ。すかさずクリスタルウォールを張り巡らし、被害拡大を食い止める希望のツバサ。やがてクリスタルウォールが消えて、静寂に包まれるセントレア空港。

「ゼロは?」
 サヤが探した。
「おらんな。どうやらクリスタルウォールの様子を見とる間に、どっか行ってしもうたな」
 タカフミも周囲を目視しながら、ゼロを探す。
「ゼロは、さっき飛んでいくのが、チラッと見えましたよ」
 人知れずワルキュリアのコクピットに戻っていたソラがいう。
「いつもゼロは、すぐいなくなるわね……。ソラ、どうしたの。また泣いて」
「サヤさん。泣いてませんよ。ただ睫毛かゴミが入ったみたいで目が痛いだけ……」

 そんなやりとりに突如割り込む大ボリュームの『六甲おろし』 さらに被さる野太い声にスピーカーが悲鳴をあげる!
「なんやソラ、またベソかいな! ま、サヤも責めたんな。親父さんの墓参して涙もろいとこに出撃かかったんやさかいな。
 アリーナどうぞ、こちらタカフミ。ビースト殲滅成功! これより帰還するでえっ」
 任務を無事クリアできた高揚と安堵もあいまってアニキ節全開のタカフミだったが、神ならぬ身では知るすべもなかった。凱旋すべく東へ向けた機首の真正面に待ちうける企みを。意気揚々と天駆ける自機が想像を絶する陰謀の真っ只中へと吸い込まれつつあるなどという真実を!



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https://www.alldesu.com/diary/78782



← take-31
https://www.alldesu.com/diary/78734

コメント

もも

2022年 01月20日 01:29

お疲れ様でしたー

ふしじろ もひと

2022年 01月20日 05:41

もも様ありがとうございます。

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