ふしじろ もひとさんの日記

2022年 01月18日 01:08

『史上最低の侵略』30A

(Web全体に公開)

<『史上最低の侵略』その30>


take-30

NOVEMBER 8TH AM 13:15

 すぐさま右へほぼ直角に機体を転じ、脱出ルートに入る『希望のツバサ』 だが、サヤもタカフミも確信している。ゼロなら大丈夫と。
 絶対零度の巨大な大鉈が正確に、ビーストの背後から腰に突き立っているのを、タカフミはかろうじて目視していた。
「大丈夫よ。ゼロがあんなヤツに負ける訳ないわ」
 サヤも呟いたその瞬間、希望のツバサは再び闇に突入した。

 ビーストの動きは止まった。だが、致命傷ではない。
 そして絶対零度の大鉈は、同時にゼロの左肩をかすめていた。
「痛ってえな……そうだ!」
 ゼロはその痛みを伝えた。相棒であるソラに直接。

”うっ……!”
 斬られたような激しい左肩の痛みに、ソラは我に返った。
”と、父さんは……?”
「よおっ。目、覚めたか?」聞き覚えのある声が意識の闇を払う。
”ゼロ!”
「イヤなヤツに掴まってたな。大丈夫か?」
 ゼロも僅かながら垣間見ていた。血みどろのソラの父が苦痛を訴えつつ、息子を引き摺りこもうとしているビジョンを。
 だがソラの父は、断じてそんな人間ではない!
 あの時あの瞬間、ゼロはそれまでの理解を超えた人間の心のありかたを見せつけられた。自ら我が子の盾となって銃口から庇い抜き、妻と弟を託した男の大きさと深さを。

”………大丈夫だ、もう”
 言わなくても、ソラには通じたのだろう。ゼロは感じた。ソラの怒りを、とどめようもない激情を。
 だがその怒りは、火を発し周囲を焼き尽くす、紅蓮の熱情ではない。全てを昇華させる、熱のない、純白の冷たい炎だ。
 愛する父を侮辱し、その誇りも人生も踏みにじった卑劣な侵略者を、ソラが許さないのは明らかだった。それはゼロも同じだった。

”あれを試してみよう。ゼロ”
「ああ、いい機会だ。サヤ達も見てねえ」
 ゼロは静かに立ち上がり、ビーストに向き直った。
 ワルキュリアのソラが、正確には人工知能が指示した通りに、サヤはフリージング・クレッセントをビーストに撃ち込んでいた。悪夢のごときビーストは背中から腰をぶち抜く絶対零度の大鉈により大地に縫い付けられたまま動けない。そして巨大な氷の刃は光なきビーストの闇ではまだ溶け始める様子もない。

”いくぜ!”「ああ!」
 たちまちゼロの両手に飛び込んで来るゼロスラッガー。それを重ねた瞬間、二枚の刃はモルゲンスタインがついた巨大なメイスに形を変えた!
 今はソラの激情ゆえに、プラズマスパークエネルギーは二人にチカラを貸してはくれないが、その必要はなかった。
 メイスを両手で振りかざすや、ビーストの腹に巨大な一発を叩き込む光の戦士。
 氷の刃に打ち抜かれ活動を停止していたビーストは、皮膚を割り腸を捩る激痛に悶えつつ、苦し紛れに再びゼロの中のソラに向けて父の苦痛を見せつけ始めた。
 しかし、相手は平然としている。それどころか腕組みをして、ローリングストーンズの名曲『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』など歌っている。
 一方で、眼前の巨人は容赦なく、己が腹をトゲつきメイスで、ガンガンぶっ叩いてくる。名匠と呼ばれるコンダクターのごとく軽々とメイスを振るい、ソラの記憶を模した父の顔を叩き潰してくる。
 ビーストは焦れた。光の戦士ゼロもソラという地球人も、さっきまでの攻め方が全く通用しなくなっている。
 どれだけ父の苦悶を見せつけようが、ソラはスカしているしゼロはメイスでひたすら撲り続けてくる。
 ついにビーストは切り札を見せた。苦悶する父がシャプレー星人に撃たれる場面を。
”……へっ”
 だが、ソラはそれさえ鼻で笑っている。ビーストはますます焦れた。そして気づいた。何かが違う、変わっていることに!

”やっと気づいたか。今、オレはソラの中にいて、ソラはオレの中にいるんだ。これだけダメージ食らわねえと気づかねえとは鈍くさいヤツだぜ!”
 ソラがゼロに言った『あれ』とは、二人がそれぞれ、外の姿を交換することだったのだ。
 かつて黄金色に輝く別な宇宙からの船で巡りあった、二人で一人の戦乙女。プロフェッショナルに徹した二人のレディーの戦い方を、ここで模してみたのだった。

 ゼロならぬソラの華麗なるマエストロぶりに、ビーストの腹にあったソラの父の顔は、ついに完全に叩き潰された。斬っても再生し、また体液が切りつけた相手を焼くなら、斬らずにダメージを与える方法がベストだ。
 だからこそ、ソラはゼロスラッガーをモルゲンスタインつきの剣呑なメイスに変えて、内臓を砕き骨を潰して内側にダメージを蓄積させる方法を取ったのだ。


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「やったで! うおっ?!」
 ダークフィールドに金色の光をもがれつつも離脱した希望のツバサの眼前に聳えるセントレア空港の管制塔! タカフミが反射的に操縦悍を切り、衝突寸前で一気に急上昇する対怪獣用重戦闘機! 衝撃波で窓ガラスは全て割れたが、空港施設は無事だ。



take-31 →
https://www.alldesu.com/diary/78734



← take-29
https://www.alldesu.com/diary/78700

コメント

もも

2022年 01月18日 01:45

頑張ってますねー

ふしじろ もひと

2022年 01月18日 06:56

もも様おはようございます。
まっとうに戦うと皆こんな感じなんですが、ポンポスが絡むラストバトルはこうはいかないという……(汗)

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