<『史上最低の侵略』その6>
A
take-06
SEPTEMBER 10TH PM 18:50
「サロメ星人……何者なんだ?」
「ぼ、ボース様、雇い主になる方です。ここは慎重に行きましょう」
嗚呼、今や正式な地球の守り手となったウルトラマンゼロの偉大なる父親、ウルトラセブンと戦った因縁を持つ彼等サロメ星人すら知らない、ヘナチョコなるスットコドッコイな5人組もまた、一応、地球侵略者である。
「おう行くぞ。メース、ミース、何してんだ?」
クビになるまで旧湾岸通の海岸を突っ切る夢野オーシャンハイウェイ建築に作業員として携わっていたオースが、女性工作員たちの背中を叩く。だが2人はそんなことにも気づかぬ様子で突っ立ったままだ。あまつさえその目にハートマークさえ浮かべている始末である。なにせ同僚は浜に打ち上げられたトドよろしくな巨漢に、真っ暗に日焼けした和製ブルース・リーもどき。そして瓶底眼鏡のヒョロヒョロときては、久しぶりに見たホストばりのイケメンッ! に、忘れていた女の血が騒ぐのも無理はない。
むろん昆虫人間である以上、彼らの本来の審美眼はヒューマノイドのそれとは別物である。だが異星に赴きその星の住人に身をやつさねばならぬ侵略者の尖兵にとって、本来なら異形の怪物でさえあるヒューマノイドの姿への違和感の克服は重大事には違いなかった。彼らの変身腹巻にはそんな自他の姿への違和や嫌悪を克服すべく脳波に作用する仕組みが施されているのだが、2人の装置はいささか利き過ぎているようだった。そもそもそんな枝葉末節の技術ばかり無意味に突出しているあたり、彼らポンポスの面目躍如というべきなのかもしれないが。
「とにかく奥へ。この仕事、何がなんでも勝ち取りますよっ」
ヒョロヒョロのドースはやる気ウセウセなボース、目がハートのメースとミース、無意味に張り切るオースの背中を押しつつ、地球人に読めないインクで『面接会場』と書かれたプレートの扉の向こうへ入っていった。
SEPTEMBER 10TH PM 21:15
「円盤生物『ガリレアス』登録しました」
「サンキュー、ファザーURANUS」
先程戦った、円盤生物ガリレアスをアーカイブに登録し終えたソラに、ゼロが話し掛けてきた。
“地球に侵略に来た連中、どんなヤツだろうな”
「まだ検討がつかないのは痛いな。ただ過去のアーカイブを見る限り、侵略者については大きく分けて3種類だ」
小さいながらも、ソラは声に出して話していた。
アリーナでゼロと会話するとき、一番不審がられないのはこのメインコンピュータセクションだ。
B・i・R・Dジャパンのホストコンピュータである『ロザリンド』にも直接アクセス出来ることと、ここに入る資格を持つ者が少ないためだ。
そして、アクセス記録は残るが中の音声までは保存されないため、ソラがゼロと話し合うには最適な場所だった。
”3種類って、どう分かれるんだ?”
「まずは様々な形で直接地球侵略に来た連中だ。アーカイブSSSP『メフィラス星人』や、アーカイブUGの『キングジョー』を操る『ペダン星人』と言った辺り。
次は間接的に地球にある何かを求めて来た連中だ。アーカイブUGにある『ナース』を操る『ワイルド星人』や、ウルトニウム採掘に来た『シャプレー星人』
『ワイルド星人』は地球人の若く健康な体を求めていた。人間と猿の頭脳を入れ替えようとした『ゴーロン星人』も、このカテゴリーだな」
ソラがブラインドタッチでキーボードを叩くと、その侵略者達がディスプレイに現れる。
“お前も落ち着いたな。以前はシャプレー星人と聞けばそれだけでアドレナリン出しまくってたのが”
「茶々入れないでくれるかい。そして最後が、ウルトラマンを狙う侵略者だ。
先日シティに飛来したアーカイブZATにもある『テンペラー星人』やウルトラセブンを抹殺しようとしたアーカイブUGにある『ガッツ星人』 アーカイブGUYSにある『エンペラ星人』もこのカテゴリーにも入るな」
“エンペラ星人を、まさかメビウスが倒すとはな”
ゼロにとってメビウスは、叔父であるタロウ自慢の教え子の一人に過ぎないはずだった。
「ミライさんだけじゃないさ。共に戦った青い剣豪ウルトラマンヒカリ。ミライさんを信じたGUYSの仲間達。そしてメテオール。……本人はシラを切っているけど、噂ではサコミズスーパーバイザーは、ゾフィーと一体化したともあるから」
“流石ソラ。賢いじゃねえか”
「だからからかわないでくれ。最近の状況はある意味、セブンが来ていた頃によく似ている。
……さて、ミッションルームに戻らないと。サンキュー、グッドナイト『ロザリンド』」
午前2時までソラはヒトミと起きて勤務だ。
“オヤジ……”
かつて、父、ウルトラセブンが愛した星、地球。
父に『ウルトラセブン』と名付けたのは、地球人だと、ソラから教えられた。
セブンが地球にいた頃、地球を守っていたウルトラ警備隊。その日本支部の、7人目の仲間。
畏敬と親しみを込めて星から来た真紅の高潔なる戦士を、そう愛称したとも。
そしてゼロの父は、この地球で与えられた名前を今も愛用している。
セブンの不祥の息子ゼロと、地球生まれの平凡な青年ソラが出会い一体化して、既に1年半が過ぎようとしていた。
ゼロは当初、ソラには散々ムカついた。泣き虫の弱虫な能書きタレ。
だが今は、共に戦うかけがえない相棒だ。
唯一気に食わないのが、ソラがオヤジのファンだと言うことくらいだ。
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コメント
もも
2021年 12月25日 01:49
面接 合格するのかな
ふしじろ もひと
2021年 12月25日 03:41
もも様こんばんは。
合格……するんですが、理由が(汗)