<『史上最低の侵略』その5>
MF
take-05
SEPTEMBER 10TH PM 18:45
延々と降下を続けた果てに、ようやく停止したエレベーターの扉が開くと、5人組の目の前には想像もしなかった広大な空洞が広がっていた。
廃工場の地下をどのくらいの深さまで掘り込んだのか、広さもさることながら高さが尋常ではなかった。薄青い金属で覆われた空洞のあまりの広さと高さゆえ、明るい光のあふれるその場所はあたかも屋外にいるような錯覚さえ抱かせるほどだった。そして1つの街の区画にも匹敵するその場所に建物ほどの大きさのある機械が林立する中から、古い大型ロケットの発射台のような形のタワーが4本そびえ立っていたが、それらは等間隔に並んでいるのではなく、2本が至近距離で向かい合う形で対をなし、広大な敷地を二分したエリアのそれぞれ中央に位置していた。周囲の機械がそれに付随するものなのは明らかだった。そんな思いがけぬ光景に、5人の宇宙人たちはおのぼりさんのごとき風情で周囲を見回していたが、やがてがやがやと話し始めた。
「さすが大手の工場はうちとはだいぶ違うよなぁ」
「比べるほうが間違ってるとあたしは思うけど?」
「この工場は廃業したという話じゃなかったか?」
「こんな地下でロケットを作ってるんでしょうか」
「それじゃ、あれを作るのがあたしたちの仕事?」
「まあ、そういうところだ」
背後から突然かけられた声に5人の宇宙人たちが振り向くと、すぐそばの機械の陰から2つの青い人影が歩み出た。それを見た5人組にとまどいが広がった。その姿が鏡に映したかと思うほどそっくりだったのだ。
痩身の男たちだった。端正でしかも彫りの深い顔立ちは名匠の手になる彫刻のごとき造形の中に若さの瑞々しさと壮年の奥深さを併せ持ち、年齢を判ずるのが困難なほどだった。隙無く着こなした濃紺の上下は飾り気皆無の地味なものだったが、その美貌と引き締まったシルエットを引き立てる役割は十分以上に果たしていた。そんな姿がいきなり2つ並んで現れたのでは、お世辞にも作法が行き届いているとはいい難いポンポス星人たちがなかば呆然とした面もちで2人を見比べるのは致し方ないというべきだったが、それが相手の顔に冷笑を浮かべさせたのもけだし当然というほかなかった。我に返ったボースに小突かれ、ドースがばつの悪そうな顔で話し始めた。
「募集広告をみてきたんですが、その……」
「ああ、面接はさせてもらうぞポンポス星人よ」
「ど、どうしてそれを!」
「エレベーターに乗っている間にスキャンさせてもらった。地球人では役にたたんからな。そもそもあの広告自体、地球人に見えない色で書いておいたが、気づかなかったのか?」
いわれて互いの顔を見交わす5人組に、男たちは呆れた様子で肩を竦めた。
「……まあいい、作業さえできるのであれば。では選考に入らせてもらおう。私はオスカー、こちらは弟のドリアン。サロメ星人だ」
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コメント
もも
2021年 12月24日 11:10
2人はロボットでは無かったんですね
ふしじろ もひと
2021年 12月24日 12:10
もも様こんにちは。
ウルトラセブンに始まりウルトラマンゼロのシリーズにも、
ウルトラ戦士に似せたロボットばかり作ってきたサロメ星人
ですので、このリレーでは彼らは何かを模倣しつつそれを超
えることで、自らの科学文明を築き上げてきたと解釈してい
ます。