＜『史上最低の侵略』その４＞
Ａ

take-04

SEPTEMBER 10TH PM 14:30

「ソースがジュディさんからなら、信用は高いわね」
　隊長である真柴リーダーは、光成補佐官の特製エスプレッソを口にしながら、ソラが渡したメモを見る。
　ここはＢ・ｉ・Ｒ・Ｄアジア、ジャパンアリーナ。
　人工島夢野アイランドの海岸に太平洋に迫り出すように作られた施設の、『シャイニー・ドーム』の愛称を持つ司令塔内のミッションルームだ。

　世界屈指の出動率と高い怪獣撃退を誇るＢ・ｉ・Ｒ・Ｄジャパンのアタックチームの七人……通称ミラクル・ワイルド・セブン……が、円卓を囲んでいた。

「厄介な事態ですね。先日のピット星人の件もありますから、なるべく早急に手を打つ必要もありますね」
　副長であり医師でもある倉澤チーフもまた、同意した。
「ならリーダー、情報部スタッフを旧湾岸通に派遣しては」
　女性パイロットのサヤが返した。

“なあソラ。メビウスやウミに聞いてみるか？”
“ミライさんは、台風『クリストファー』が夢野アイランドを直撃した夜は確か、俺達が成層圏で戦っていた時、代わりに地球に接近しつつあったネオタイラントと、木星の衛星エウロパで戦っていたんだろ”
“ネオタイラントか。くうっ、オレが戦いたかったぜ！”
“またそんなことを……。それにウミを戦いには巻き込みたくない。
　手遅れにならないよう調査を”

　ゼロとソラがそんな会話をテレパシーでしていた時、アリーナ内部にブザーが鳴り響いた。
　ミッションルームのスクリーンに、科学分析部から、Ｂ・ｉ・Ｒ・Ｄルナやスペーシーの迎撃を振り切った巨大怪獣の姿が投影される。
「アウトオブアーカイブ。『サタンモア』によく似ていますが、相当な大型です」
　科学分析部の高嶺リーダーが検索データに該当なしと告げた。

“あれは……！　まずいぞソラ。あいつは外銀河からの円盤生物ガリレアスだっ。
　獰猛で危険な種族だ。しかもあいつは酸素が多い場所では、爆発的に分裂増殖する。
　徹底的に焼き尽くすしかねえぞっ！”
「ミーティングはいったん打ち切りね。タカフミ、サヤ、ソラ、謎の円盤生物撃退」
「ラジャー！」
　パイロットトリオは直ぐさま愛機に飛び乗り、アリーナから飛び立つ。

　やがて太平洋上空で、三機の戦闘機と共闘せんとまばゆい光と共に現れたのは、光の国の戦士、ウルトラマンゼロだ。

　ゼロはかつて、父のあたたかさと冷たさに戸惑い傷つき、光の国を出奔した。
　そして時空の歪みに巻き込まれ、気づいたら地球のそばにいた。
　そこで見た地球に迫る侵略者の姿を追いかけていた時、愛する者を守るため、なけなしの勇気を振り絞り、侵略者の手先であるブラックキングを挑発する若者を見た。
　その若者こそが、ゼロと今は一体化しているソラだ。
　ブラックキングとゼロの戦いに巻き込まれ、瀕死となったソラにゼロは呼びかけ一体化し、今は二人で真の『勇者』を目指し、日々、共に成長していっていた。

　炎の天使カマエルの名を持つサヤの愛機からの、ハイパー・ディメイション・アタック『カマエル・ブレージング・カーニバル』の炎を纏わせた、プラズマスパークスラッシュで、見事、外銀河からの円盤生物を仕留めてみせた。

　そう、ミラクル・ワイルド・セブンの敵……ゼロの出番があるにしろないにしろ……、つまり地球を脅かす侵略者や異星人は、たくさんいる。


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SEPTEMBER 10TH PM 18:35

　まだまだ暑さは夏とは変わらぬものの、暦の上では秋となっているように、秋の夕日はつるべ落としだ。
　そしてここ旧湾岸通では、かつて大工場が居並んだエリアを、五人の人影が歩いていた。
「ねえ、ドース。ドンドン真っ暗になっていくじゃない。ホントにこっちでいいの？」
　副官メースが瓶底眼鏡のドースを睨む。
　五人とも服装はちぐはぐだが、なんとか無作法にならないようにしていた。
　ただしボースは、先月のさくら台地区の資源ゴミ及び大型ゴミの日に拾ってきたバーバリーのジャケットがピチピチで、今にもボタンが飛びそうだが。

「旧湾岸通、大工場地区、旧七海重工第二工場。……あ、ここですね」
　撤退するまでは、火星と地球を往復する貨物船を作っていた七海重工の工場が、昨日剥がしてきたポスターにある面接及び就業場所だ。
　さすが宇宙貨物船を作っていただけあって、広大な工場だ。

　ゲートのインターフォンを指定された要領でボタンを連打すると、従業員通用口のゲートが軋んで開いた。
　そして指定されたトイレの個室に入り、同様にレバーを操作すると、その個室はエレベーターとなって地下へ降下し始めた。



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