<『史上最低の侵略』その1>
MF
take-01
DECEMBER 1ST PM 13:35
「で、出た!」「インペライザーだぁ!」
廃ビルの一室で一様に顔を引きつらせ情けない悲鳴を上げる5人の男女。地球人に身をやつしてはいるが、彼らこそ旧湾岸地区にひしめく侵略者中最速の逃げ足を誇るポンポス星人にほかならない。
なにしろかのエンペラ星人の侵略の真最中に地球に来てしまった最悪の間の悪さの結果として、瞬時に墜落した宇宙船から脱出できた僥倖を喜ぶ間もなく、侵略する相手だったはずの地球人といっしょくたに初日から逃げ惑う彼らを追い立てたものこそこの機械仕掛けの魔神だったのだから、失敗続きの侵略生活の全ての記憶の中で最も恐ろしい存在であるのは当然だった。にもかかわらず、超肥満体の首領ボースが裏返った声を励ましつつ他の者に檄をとばす!
「しっかりしろ! とにかくあいつをなんとかしないとワシらの夢もかなわんのだ。あれを起動しろドース!」
「い、インペライザーと戦うんですかぁ?」
眼鏡をずり落としたまま頓狂な声で返すひょろひょろの部下にかみつくボース。
「あんなものが地球を占領してみろ。ワシらは2度とカナリーの飯は食えんのだぞ。それでもいいのかみんな!」
それを聞いた4人の昆虫人間たちの中で、同じ生存本能に根を持つ2つの本能が激しく争う。だが熾烈かつ短い戦いの結果、恐怖に打ち勝ったのは食欲のほうだった。こわいほどの熱気を目に漲らせ首領を仰ぎ見る部下の顔また顔!
「……あたしたち、具なしカレーとパンの耳の生活から抜け出そうって誓ったんですよね」
副長格のメースの言葉にうなづく戦闘員のオース。
「一生ついていきますぜ」
諜報担当のミースの目には涙さえ浮かんでいる。
「あなたの部下に生まれてきて本当によかった!」
感動の面もちで深々と頷いたボースだったが、やがてドースに声をかける。
「……おい、まだ起動せんのか?」
「そういわれましてもボース様、なにせ材料にいろいろ問題があるので起動には20分かかると申し上げたはずですが」
「そうだった! くそ、仕方がない。それまでの間全員でゼロを応援するぞ!」
ボースのかけ声とともに、拾ってきたブラウン管テレビを流用したモニターに向かって虎キチさながらの応援を始める侵略者たち。その乱れがちな映像の中では……。
「デャアアアアーーッ」
いかにも機械然とした動きで直進してくる相手の手前で跳躍するや、大鎌のごときツインソードを大上段から振り降ろすゼロ。瞬間、両手から伸ばす分厚い刃でまっこうから受けとめる黒鋼の機械獣。ゼロの動きが止まったとたん猛然と押し込んでくるその顔面の砲門がゼロの眼前でジャキンと伸びる!
「野郎っ」
相手の胸を蹴りつけ上空に逃れる若き戦士を追尾する無数の光弾。その上空から光弾もろとも姿勢一つ崩さぬ強敵にワイドショットを放つゼロ。壮絶な爆炎に包まれる黒き巨体だが、ダメージ1つ受けた様子も見せずに炎から踏み出すや、突き出す両腕から撃ち出す刃が鎖を引きつつウルトラ一族の若者を急襲する。
「人マネかよ、ふざけやがって!」
”気をつけろゼロ。かなり強化改造されてるみたいだ”
ソラの警告を後目に先行する刃を後ろの刃に蹴りつけようとしたとたん、触れた足から上がる火花と煙! 強烈な電撃に姿勢を崩したその身を2本の鎖で絡め取るや、凄まじい電撃に苦悶するウルトラ戦士を大地に叩きつける機械仕掛けの破壊神。そこへ飛来したウィング・オブ・ザ・ホープのコクピットで、瞬時に状況を把握した真柴リーダーが号令する!
「タカフミ、あの鎖を切るのよ!」「おりゃーっ」
トリガーを押すや、一群のミサイルが尾を引きながら電光走る2本の鎖へと伸びてゆく!
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コメント
もも
2021年 12月20日 00:38
鎖 切れると良いですね
ふしじろ もひと
2021年 12月20日 05:44
もも様おはようございます。
なかなか手こずる相手です♪