＊決戦に向けて

　原発での戦いの経緯から、特殊部隊は東京湾近くにゴジラが潜み、機龍が地上に出るとそれを察してやってくると分析し、ならばあらかじめ都民を避難させた上で機龍を地上に出せば、体勢を整えた状態で迎え打てるとの考えに基づく作戦を立案し承認された。ビオランテという不確定要素はあるものの、ここまでビオランテがもっぱらゴジラを攻撃するばかりで特殊部隊への攻撃を見せなかったこともあり、その行動や位置はある程度予測できると見なされたのだ。作戦の時刻が相手を視認しやすい夜明けに設定されたことを受けて、マスコミ各紙は都民への告知に際し一斉に「希望の夜明け作戦」なる見出しを付けて書き立てた。

　省次はそんなマスコミの背後に山川の存在を感じずにいられなかったが、ゴジラの出現をコントロールすることで事前の準備を整えるという発想そのものに異論はなく、告知から１０日後に設定されたＸデーに向け、これを最後の戦いにしなければとの決意を胸にある準備に取り組んでいた。湯原教授が言い残した機龍に芽生えているであろうゴジラの意識をいかにして抑えるか。そのためにはそれをなんらかの方法でリアルタイムで正確に把握する必要がある。瞬時に激変する戦いの帰趨の中でそれを実行せねばならぬ以上、データを読んで解釈する方法では対応の遅れを招きかねないと判断した省次は、ヘルメットに機龍の中のゴジラの脳が発する脳波を自分の脳で感受するための装置を組み込み、もしＡＩの言語領域にアクセスがあれば選ばれた言葉をバイザーに映し出せるようにした。本来は有効性や安全性の確認のため実験が欠かせぬはずだったが、ゴジラの襲来を招く危険があるため機龍を起動できぬ以上、ぶっつけ本番で臨むしかなかった。Ｘデー前夜にやっと完成した装置を手にした省次は、ビオランテの因子を自らに投与する瞬間の英理加の覚悟はいかなるものだったのか、想いを馳せずにいられなかった。

　ついに空が白み始め作戦開始のサイレンが鳴る。ヘルメットを被るや省次はハンガーへと走りつつ装置を介して指令を出す！
「機龍、起動せよ！」


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