*暴走
「後方のビオランテにはミサイル、前方のゴジラにはメーサーで同時攻撃! 奴らを機龍に寄せつけるな!」
機龍が砲門を開くやメーサー殺獣光線が前方のゴジラを直撃し背後のビオランテの根をミサイルの弾幕がずたずたにする。だがちぎれ飛んだ無数の根は地中に潜る本体の後を追い、正面のゴジラはメーサーの痛手をものともせず機龍に迫る!
「ゴジラを近づけるな、攻撃を前方に集中!」
巨体を丸ごと包む猛爆にさしものゴジラも足が止まるや、地中からのびる根の大群が背鰭を覆うように全身に絡みつく。遂には巨大な花から吹き付ける溶解液を頭上から浴びるに至り、猛然とあがる白煙の中で軋むような咆哮をあげるゴジラ。そのとき、
「機龍沈黙、コントロールを受けつけません!」「なんだと!」「またフリーズかっ」
色めき立つ司令室の一同を、次の瞬間さらなる驚愕が襲う! モニターの大画面の彼方で機龍が突如としてミサイルやメーサー砲を辺り構わず乱射し始め、大きく蛇行しつつも原発のある方へ動き出したのだ!
「このまま進めば原発がミサイルの射程に入ります!」
「くそ、どうにかならんのかっ」
そのとき、
「ビオランテ、ゴジラを放し地中に潜りました!」
切り替わった画面に背鰭を中心とする背面が大きく溶け崩れたゴジラが映る。だが巨獣が屈めていた身を起こすうちにも、その傷が徐々に回復し始めるのが見て取れる。
「あんな傷でも再生するのか」「なんという化け物だ……」
そんな呻き声があがる中、さらなる報告がその場に響く!
「機龍、移動停止。地下からビオランテに襲われています!」
戻された画面が、下半身に絡みつく根で動きを封じられつつもなお八方にミサイルを連射する機龍を映す。と、機龍が手首に仕込まれた刃を延ばすや、腰まで埋め尽くそうとする根を切り払い始める。その背後から、ゴジラがゆっくりと迫ってくる!
「まずい、これでは挟み撃ちだ」「なんとかコントロールできんのか」「だめです、手動コマンドも受けつけません!」
すると戒められた機龍の真横の地面が大きく盛り上がるや、迫るゴジラに砂塵を巻き上げつつ溶解液を吐きかける巨大な花! そのとき機龍の上半身が回転するや至近距離からビオランテを直撃する必殺の冷線砲アブソリュート・ゼロ! 瞬時に凍りついた花も根も次の瞬間砕け散る!
「おぉ……っ」
あまりの威力に絶句する一同の前で、だがエネルギーを使い果たし首も腕も垂れ下がった姿勢で停止する機龍。そこへたどり着いたゴジラが真横を向いたままの機龍の胸の装甲板を剥がそうとするかのごとく爪を立てる!
「いかん、機龍が破壊されるぞ!」「やはり原子炉を狙っているのかっ」
焦る人々を、だがさらに襲う驚愕! まだ機龍に巻きついたままの根が地中に潜ったとたん、ゴジラの背後にわき上がる膨大な根の束、さらに2本の巨大な花! それらによるまだ傷も癒えぬ背に絡みつくわ溶解液を吐くわの猛攻に対し、背鰭の損傷ゆえか熱線での反撃もままならぬ様子の巨獣。ついに機龍から離れるやビオランテを引きずりながらも溶解液の威力を薄める海の中へと没しゆく。
そんな光景に、省次は気持ちの整理をつけられずにいた。あの白神の返信メールはこういう意味だったのかとの思いに圧倒されつつも、最初の戦いよりあまりにも強化されているビオランテの再生能力に心が警報を発していたのだ。おそらく白神の意図したとおり、いまや地中に一本でも根が残っていれば機龍の冷線砲もゴジラの熱線もビオランテを仕止めることはできない。あまりに急激なその再生速度は、だが異常だった。まともではなかった。もはや再生能力では明らかにビオランテの後塵を拝するゴジラ。けれど若人の直感は、そんなゴジラにはない危うさめいたものがビオランテにあると訴えてやまない。
自室に戻ると省次は白神にメールを送った。やむことを知らぬ内なる警報を包まず伝えるべく。しかし祈る気持ちで待つ省次のもとに、英理加からの返信はこなかった。
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コメント
もも
2020年 12月19日 07:36
どうして暴走しちゃったのですかね
ふしじろ もひと
2020年 12月19日 07:57
もも様おはようございます。
ゴジラの声が引き金なのは原作映画と同じなのですが、本当の理由はラスト近くまでお待ち下さい。