*追跡
「地中にビオランテのものと思われる振動を捕捉、既に東京から離れ海岸沿いに北東へ移動中」「機龍起動! 追跡せよ」
地下格納庫からせり上がり、背面に装着された移動用ロケットランチャーで舞い上がりビオランテを追い始める機龍。そのとき東京湾外に展開していた艦隊からの緊急連絡が入る!
「外洋からゴジラ接近! 湾外で向きを変え海岸沿いに北東へ移動中!」
一瞬の沈黙。やがてざわつく司令室。
「なんだと、まさか機龍を追っているのか?」
「そうとは限らんだろう。ビオランテを追ってるかもしれんじゃないか」
「いえ、ゴジラが動き出したのは機龍が地上へ出てからですし、ビオランテは一貫して地下にいる。地下の機龍がゴジラに襲われていないことも考えれば機龍を追っているとみなすべきです」
そういうと、湯原教授は隣の省次に声をかける。
「前回のフリーズがビオランテの攻撃に苦しむゴジラの声がきっかけだというのは間違いないかね?」
「はい、記録を精査すると、そこで反応が途絶えていました」
そうか、というと老教授は若者に耳打ちする。
「機龍の中で脳はあの後も生長している。ゴジラの声がどう影響しているのかわからない以上、いざという時に機龍を手動操縦に切り替えるプログラムをAIより優位のものとして組むしかないだろう。これは君の専門だ、頼む」
「僕もそう思ったので、あと少しで完成します」
省次が小声で返したとたん、通信係の緊迫した叫びが響く。
「ビオランテ、旧福島原発跡地に向け転進。10分後には到達します!」
瞬間、司令室が怒号に包まれる。度重なる襲来によりゴジラに狙われるのを避けるべく全原発の停止を余儀なくされた日本だったが、旧福島原発は地上施設の廃炉作業のかたわら、その地下で極秘裏に日米共同研究のため新型の原子炉が稼働しており、機龍に搭載されている原子炉もその成果なのだ。
「ビオランテめ、まさか原発を襲うつもりか!」
「深度は維持、速度も落ちていません」
「とにかく総員退避させろ!」
「機龍の進路を海上に変更! ゴジラを原発から引き離せ!」
「ランチャーの燃料は残り7分。大きな変更は無理です!」
「ビオランテ原発に接近、深度速度とも維持」
「ゴジラ深度を50まで上昇! 機龍の進路後方を追尾中」
「いいぞ、とにかく原発に近づけるな!」
省次の脳裏を疑問がかすめる。白神はなんらかの意図に基づきこんなことをしているに違いない。では、その意図はどんなものなのかと。そんな若者の耳に老教授が囁く。
「確かに原子炉が原因でも説明はつくが、ゴジラが旧福島原発を無視して機龍を追い続けているのも事実だ」
その間にも上がり続ける声また声。
「ビオランテ、深度を維持したまま原発の真下を通過!」
「機龍、ランチャーの燃料がもう僅かです!」
「進路を陸へ! 水中では動きも武器の威力も落ちる!」
「ビオランテ減速、深度急上昇! 地上に出ます」
「ゴジラ、機龍を追い陸へ転進しつつ急浮上!」
ついに海を割り3列の背鰭から海水を滝のごとく流しつつ立ち上がるゴジラ。その前方に着陸しゴジラへと向き直る機龍の背後で土塊を巻き上げ地表にあがき出る無数の根。その中央から伸び出た茎の先で巨大な蕾が膨れ上がるや、牙めいた棘を備えた赤い花弁が幾重にも大きく花開く!
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コメント
もも
2020年 12月04日 23:22
ゴジラは何泳ぎなんですか?
ロケットランチャーを追うなんてすごいスピードですね
ふしじろ もひと
2020年 12月04日 23:31
もも様こんばんは。ゴジラが泳いでる姿が撮影されたのは平成になってからですが(それ以前は着ぐるみでしたから、そんな重いものを着て泳ごうものなら溺死確定でした)ワニのイメージで長い尾を左右に揺らすCGでした。当然歩くよりはかなりスピードが出せると思われます。なお機龍のほうはジェットランチャーを使ってはいるものの、地下を移動するビオランテを追跡しているので相手のスピードに合わせスピードを加減しつつ飛んでいます。