最近気が付いたが、まず、身障者・ボランティアの別なく、Ｓ園に関心を向ける者同士は気持ちがお互いに通じるし、話も噛み合う。例え、そこに行った事がない人たちに対しても、わずかでも関心を持って下さる方とは同様である。その事について、初めは仲間意識だと思っていた。でも、そのような単純な言葉では表現できないものがあるはずだ。例え、０．１％だとしても、問題意識を共有しているから、心が通じるのではないだろうか。それは他の問題、例えば、二酸化炭素排出問題とか、沖縄県のアメリカ軍基地などの事に問題意識を持つ人たち同士にも見られる現象だと思う。あるいは、昔は水俣病の問題に目を向ける者同士などにも見られた現象だと思う。強いて言えば、「共有関係」という言葉になるだろうか。とにかく、一緒の会にいたり、お酒を飲み合って仲良くする「仲間意識」とは性質が違うものだし、このＳＮＳ時代ではますますそのような関係が多くなり、それが社会変革に導くのかもしれない。


　　ここで４０年くらい前のＳ園に行ったボランティアたちや、身障を持つ僕。非常に皆悩みを抱えていた。当時は得体の知れない悩みで、何故悩んでいるかも判らず、それが尚更悩みを深めた。皆落ち込んでいたし、僕含め、お酒をその事で多く飲んだ人たちもいた。（今の僕は、酒は３０年前から止めているが。脳細胞や脳神経をアルコールは殺す事を知ったので）。酒を飲んでも、無論、何も解決しないわけである。

　　その悩みの正体も「外部者の立場」であり、「私に何ができるか、又、自分の生き方に絡められるか」だったと思う。「立場」は、職員とも、園生とも違うわけだし。又、「できる事」とか「生き方に絡めることができるか」はもっと難しい。絡められなければ、単なる遊びや精神修養みたいにもなるから。何もＳ園関係だけでなく、日常においても私は何なのか。そのような事も出てくるわけである。福祉会の別なく、Ｓ園に行った人たちは大体悩んでいた。悩みに至らないような人たちが、むしろ、早く止めたくらいだった。「そこは私の求めるものはない」とか言って、すぐ止めた例も知っているし。その問題は僕も去年まで悩み続けたし、同様の例もかなりいる。去年の５月から例の小説を書き始めて、まず「僕にできる事」の問題が解決したわけだし、また、書いていって、園生たちとの交流を明確に思い出し、恋愛・結婚願望など、僕の生き方に本当は深く絡んでいた事も知ったわけだ。ならば、「立場」もあったし、今もある事になるわけである。「弱い立場同士の絆を作れる立場」だったわけだ。特に、野口栄一君とは、最大級の友情が成立していた事も思い知った。

　　さて、動物の恋愛・結婚は大体性欲で成り立つと言われているが、人間は心の動物だから、性欲主体ではない。でも、「私は何者か」判らないようでは、又は、判らない時期が続けば、異性に自分の心も伝えられず、恋愛や結婚もできないだろう。僕に今まで御縁がなかった理由もそのような事だったと。現に、９０年代に少しだけ文通した女性からはそのように言われている。当時も僕は実際は「Ｓ園にできる事はなかったか」とばかり考えていたからである。同様なボランティア男性もおり、彼も独身のままである。でも、今の僕は立場などの悩みは消えて、Ｓ園行きも、今の小説書きも自分の大事な一部である事に気が付き、痛感もしているわけである。僕がそこに行き、今も書き続けている一番の理由も「僕は弱い奴である。園生も、職員たちも弱い人たちである。だから、愛を求めてそこに行き、今も書いている」になる。その価値観に見合う女性の中から、今後は御縁・妻が出るのかもしれない。ある意味では、僕の最大の親友である野口栄一君が引き合わせる形で。そのような事も思うわけだ。感謝で心が一杯だ。