現代の英語圏ではアーサナに重点を置いた体操的なヨーガがハタ・ヨーガと呼ばれて広まっているが、マーク・シングルトンの研究によると、それは中世のハタ・ヨーガが連綿と現代に伝えられたものではない。
その直接的な起源は、西洋の身体鍛錬や体操法の影響を受けて20世紀初頭の数十年間にインドで形成された「創られた伝統」であった。
伊藤雅之によると、現在世界的に普及しているそれは、19世紀後半から20世紀前半に西洋で発達した身体鍛錬(キリスト教を伝道するYMCAやイギリス陸軍によってインドに輸入された)やインド伝統武術が融合してインド独自のものとして体系化されたヨーガ体操である。
伊藤は、この西洋身体鍛錬に由来するヨーガ体操はハタ・ヨーガと呼ばれるが、現在のハタ・ヨーガのアーサナと、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した(本来の)ハタ・ヨーガとのつながりは極めて弱いと指摘している。
1920-30年代に、西洋の身体鍛錬から発生した多様な体操法などが融合してインド伝統のハタ・ヨーガの技法として確立した。
「現 代ヨーガの父」と呼ばれるティルマライ・クリシュナマチャーリヤ(1888年 - 1989年)も、西洋式体操の影響を受けた身体技法を自らのヨーガ・クラスに取り入れ、思想面にヴィヴェーカーナンダ(1863年 - 1902年)などのヒンドゥー復興運動の思想と『ヨーガ・スートラ』を援用した。
現代の多くのヨーガのアーサナは、この現代のハタ・ヨーガがベースになっている。
シールシャーサナ(頭立ちのポーズ)やサルヴァンガーサナ(肩立ちのポーズ)はクリシュナマチャーリヤが重要視したものといわれ、現代のほとんどのヨーガ教師は、クリシャナマチャーリヤとは別系統の人々も含め、直接的・間接的に彼の影響を受けているといわれる。