９０年代だっただろうか、こんなことを間接的に聞いた。マザコン男に好かれ、結婚した尽くし型の女性。例えば、手作り餃子をいつも作らせるなど、ムリばかり押し付けられ、疲労困憊し、果ては離婚。本人はもちろん、女性の親兄弟の悲しみはいくばくのものか。僕も心動かされ、それ以降は離婚に肯定的な考え方になったものだ。その男は明らかにパートナーに母親の代理を求めていた。男女愛は求めていなかった。女性側も真の恋愛を知らずに結婚したから、悲しいことになった。
　とは言え、今思い出すと、ムリは言わなくても、今までの結婚の姿は以上だったのではないか。男はパートナーに母の代理を求め、女性側も受け入れるという。宗教関係や福祉会の仲間婚にはそのようなものが多いわけです。マイホーム期待でも。８３年には僕も身障運動家の女性と「こんなものは愛ではない」と批判し合い、意見が一致したことも懐かしく思い出されます。その身障女性は「だから、なおさら、身障女性は結婚や恋愛から差別されるの」と泣きそうに言っていました。その時は既婚でしたが、独身時代の寂しい思い出がトラウマになったわけですね。過去の道筋を変えれば、僕もそのような結婚はあり得た。妻は母の代理。一生男女愛・ふれあいは知らなかった。恋愛小説や万葉集読んでも理解できないわけです。恋愛から得られる活気もない。文にも影響し、小説も随筆も書けないでしょう。独身時代よりも寂しくなるはず。ＳＮＳもしていない。不幸になったことが判ります。
　明治以降の結婚制度は、愛がなくてもできるものです。