ロケット工学博士の糸川英夫氏が８０年代の著書で「日本人は言葉のやり取りが苦手な民族であるから、常に仲介者を必要とする。戦前の陸軍と海軍もそれで意思疎通を欠いたが、天皇が仲介していた。巷では、天皇みたいな人がケンカの仲裁をすることが多い。それゆえに天皇制は日本には必要である」と述べている。天皇制は憲法にも絡む大きな問題でここでは述べないが、ただし以上から明治の時でも日本社会は言葉が失われていたことがわかる。また、「ミニ天皇のケンカ仲裁」は僕も各場で見てきた。天皇制に反対するキリスト教系も、主教が天皇みたいになっていたから、皮肉である。
　ただし、万葉集からは、日本人の以上の民族性は否定される。その辺は糸川博士は勉強不足かもしれない。その通りならば、俳句の源の俳諧連歌も生まれていないわけだし。もともとそうだったわけでもないだろう。いつからか、変質したようだ。時期も理由もわからないが、言葉を取り戻す必要があると思う。