実録小説。次の次の章に、一身障園生の悲恋を描きたいと思っているが、恋愛感情に限らず、「感情」なるものは人を結び、共有できるのか。「できない」と今の僕は答えを出している。
　　昔から他人の感情を共有できたことはない。その感情の背景が理解できれば、上出来である。その理解は他人に求めても良いが、同じ感情を持てとか、共有しろと頼むことは不可能である。人間の気持ちは一人一人違うし、また、感情は上べだけですぐ変わるものだし。誰でもそうだ。
　　考えてみれば、近代以降の恋愛は感情中心で、「私はあなたに好きな感情を持った。だから、あなたも私に同じ感情を持て」というものだ。ムリである。又、「好き」という感情も多様だから、相思相愛とか夫婦になっても同じ感情は持てない。「持った」という錯覚はあっても。夫婦になり、その錯覚が判った時に離婚する例が多いようである。
　　数年前に知り合った知的障碍を持つ一女性に僕は好かれ続けている。でも、僕はそのような感情は持てない。もし、相手が健全者や身障者だと仮定しても同じだと思うし、以上の事も話すわけだが、知的障碍を考慮して相手の為すがままにしているわけだ。
　　また、交際した相手が部落や在日系だと判ると恋愛感情も冷め、トラブルになる例もあるとよく聞く。感情は差別の壁を越えないわけだ。
　　本当の恋愛は一緒に真理や命、美などを追求していく内に自然と魂ごと共有し合うようになり、起きるものだろう。祈り、真理、命、美は求め合えは共有できるから。イエスが説いた「男女は一体なり」もまさにそれだと思うが。ヨーロッパでは、近代以降、感情を中心とした恋愛が主流だった。矛盾だらけだが、だれもおかしさに気が付かなかった。離婚の多発、非恋愛という形で矛盾が暴露されているようである。