Ｘ君の続きである。彼は脳の構造が他の人たちと少しだけ違うだけなのに、ストレスが多く、心の交流に欠ける今の社会では何もできず、精神障碍者の烙印を押され、精神障碍の知識のない人たちからはバカにもされ、果ては精神病院で隔離生活を余儀なくされるわけである。その他、脳は生まれつき器質性障害はなく、怒りやすくもないが、やはり、ストレスや寂しさから別の種類の精神病にかかる人たちも日本でも増えている。それらは「今の文明が作り出した障碍」であり、文明を変えない限りはどうにもならないわけである。その見方は「身体障碍関係にも言える」とよく聞く。自ら生まれつきの身体障碍を持つ僕は、どうしても自分の障碍を客観的に見る事ができないので、そのような見方の見解は今でもできないままだが、そのような見方もある事を付け加えておく。


　　以上から時々出てくる意見が「だから、中世とか、日本の江戸時代の方が障碍を持つ人たちにも良かった」というものである。現代文明批判に重きを置くばかりの意見。そのような人たちは歴史の勉強不足だと言いたい。日本の江戸時代は厳密な身分格差があり、それだけでも差別的だった。又、その場合、武士の子は武士、大工の子は大工、農民の子は農民。足や目が不自由な人がそのような事ができるだろうか。更には、ハンセン氏病患者。身障者やハンセン氏病患者たちの多くは、住む所も追い出され、乞食をして、そのまま病気にかかり、早く死んでいたのではなかったか。時代劇にもそのような乞食を多く見るではないか。ヨーロッパや中国の中世も同じである。Ｘ君を日本の江戸時代に置けば、現代よりもどうにもならない事も見えている。武士とケンカして、早くに切り殺されたかもしれない。江戸時代の方が良かった、とは言えないわけである。無論、全ての人たちにとっても言える。住まいは劣悪で、冬は特に寒く、それだけで現代人はそのまま肺炎にでもかかり死ぬわけであろうから。医者もまともな者はいなかったし。

　　とにかく、Ｘ君と付き合い、結果的には追い出してしまったが、彼から多くを学べて良かった。彼に感謝しているし、「よく生きた」と尊敬もしている。

　　　尚、文芸誌原稿にもＸ君の事を書いた。その方がコンパクトに書けた。その文芸誌は６月２０日に発行されるので、その時にブログなどにも投稿し、また書いてみたいと思います。