整理して思い出すと、自分の置かれた状況について、我々の行った各場の人たちは誰も理解できていなかった。不満を言う人はいても。不満は断片的なものであり、状況とは違うし。だから、各場の人たちの声を聞いて伝えても断片的な話にしかならず、ＶＹＳ外の人達には勿論、ＶＹＳでもその場に行かなかった人たちには理解されなかった。以上は大事な事ね。
　　光明養護学校もそうだった。その置かれている状況について、先生・父母・生徒と誰も判らない。僕もそうだった。僕も今でもそう。断片的な事しか母校の事は話せないよ。
　　更には、ＶＹＳ全会員も。誰も自分の置かれている状況を話さない・書かない。というより、「判らないから話せない」わけだ。８０年ごろ、愛読した身障ミニコミ誌も、そのスタッフの自分の置かれた状況については一言も書いていない。廃刊後、一時僕は変に思ったわけだが。
　　以上は当たり前だと思う。自分の置かれた社会状況について、まともに判る人はまずいない。それだけ社会的な因縁は非常に複雑で、簡単には理解できないと。理解できるとして、古代から現代までの歴史の流れを丹念に学ぶ事のみ。それならば、自分にしろ、各場にしろ、その置かれた社会状況についておぼろげにも見えてきて、初めて書く事もできる。僕の場合、各場の内、やっとＳ園だけが歴史的考察から見えてきて、書けるようになった所だと。例えば、全生園とか、高島平団地については今も話せないね。全生園の場合は元患者や職員のほとんどが不満しか述べられない状態だし。話は戻り、その身障ミニコミだが、ミニコミの主旨＝自分たちの状況を訴えると規定すると、ミニコミの役も果たしていなかった事になる。人の事は言えない。仮に僕なり、ＶＹＳの人たちがミニコミしても、何も書けないわけだからね。それだけ人は自分の置かれた状況が見えず、また、社会は極めて複雑怪奇であるわけね。これが人間であり、社会だね。