10月30日の朝日新聞によると、中国の高齢者人口はすでに1憶9000万人だという。今後はしばらく増え続けるから、さらに莫大なものになる事は間違いない。中国古典詩をもじり、「高齢三億人」もあり得るわけである。すでに介護問題は深刻化して、日本の介護システムの導入が始まっている。「介護」は幅が広く、料理、買い物、洗濯、掃除も含まれる。やがては、身体介護の必要な例が多い、80歳以上の人たちも増えるので、年々深刻化するわけである。
しかも、介護は何をするにも意思疎通が必要だから、その国の言葉の微妙な表現が判らない外国人には不可能である。例えば、英語はアジア・アフリカ・中東のかなりが公用語や準公用語になっているのでイギリスやアメリカにはそれらの国々からかなり介護士が来ているし、フランスの元植民地の国の人たちもフランス語が今も通用するから、フランスも同様だが、日本や中国はそのようなわけにはいかないわけである。国内で介護士を作らないといけない。軍隊を介護士に振り向けても、2億人は支え切れないだろう数である。日本、韓国、中国、台湾と介護問題で協力しあわなればやっていけないわけである。日本はすでに大変だが、それを上回るスピードで中国は少子高齢化が進んでいるわけだから。10年後の中国社会は誰も読めないわけである。
そのような状態ならば、中国は戦争を起こせないわけである。戦場に行くのは若者たち。それが死ぬか、ケガして要介護者になる事は、介護の担い手が減ることを意味するから。1960年前後に戦争して大勝をしたインドと去年もめたが、戦争は中国側は極力避けた。コロナやアメリカとの関係だけでもなかったと僕は見ている。対台湾も明らかに脅しだけである。
その中国も戦後は1980年くらいまで人口が非常に増えた。それと同時に戦争も多かった。1950年には激しい朝鮮戦争を経験し、その傷が癒えない内にインド相手。1970年戦後はソ連と国境で戦闘。79年にはベトナム。それが最後である。戦後のアメリカも人口が増え、同時に戦争ばかりしていた。明治以降の日本と。日本も人口が増え過ぎ、ブラジルに移民もしたが、それも足りず、満州移民までした。唐代の中国も人口が増え、戦争も多くしている。「人口増加期は戦争と移民が多い」とマルサスなど、昔から指摘されている。人口が余り増えなかった江戸時代の日本は戦争しなかった。戦後の日本もしばらくは人口が増えたが、平和憲法という重しがあり、戦争せずに済んだ。80年代のイラン・イラク戦争も人口増加の下、起きている。人口停滞期の戦争は僕が見た限り、80年代の旧ソ連のアフガニスタン侵攻だけである。その戦争はソ連軍部がアフガニスタンのイスラム勢力を甘く見て、数ケ月で終わる予定が長引いたわけである。ソ連側も多数の死傷者を出し、ソ連崩壊の要素の一つとなった。
つまり、「人口停滞社会は戦争が起こりにくい」という利点もあるわけである。別の機会に書きたいが、今回の選挙でも各党共、人口増加策ばかり述べて、その利点は述べられていない。シングルママへの援助は大いにすべきだが、人口停滞は悪い事だというドグマにとらわれているように僕には見えて仕方ない。更に言うと、子供がたくさんできる社会は、女性が家の中に閉じこもり、仕事や社会活動をしない・できない社会の事である。1970年代までの中国や日本は「女は家にいろ」という古い観念が続いていた時だった。だから、女の人のほとんどは社会には出ず、家の中で「奥さん」になるしかなかった。女性たちの意識は変わり、その昔に戻ることはできないし、戻せば、社会の労働力は半減するから、経済恐慌も起きるわけである。
中国の高齢化はスピードが速いだけで日本や韓国にも当てはまるし、ベトナム、インド、インドネシア、ブラジルなども跡を追っているわけである。そろそろ、「少子高齢化は悪」という観念は地球人は捨てた方が良いように思われる。