秦野幸雄は恋に挫折して、保守的な考え方になり、もう一人の新潟県出身の園生と次第に合わなくなるわけです。先の事ですが、口論も書きます。それで初めて身障園生間の会話の場面も書ける。
　秦野のモデル人物こそ、僕を変えたのかもしれません。それまでも新約聖書はごく一部だけ読んでいましたが、愛という観念は持てなかった。エロスしか。そこで判りやすい言葉である「友だちになる」という言葉を使い、身障運動の根拠にして島田や全生園、身障会に行っていた。でも、その彼に「ボランティアは愛でするもの。島田にもそのような関わりをして欲しい」と言われた。言われた時は判りませんでしたが、段々その通りだと思うようになりました。僕のしている事は身障運動であり、ボランティアではないですが、愛が基礎には変わりがありません。彼の言葉がずっと残り続けています。ありがたい人です。それから、彼は「仲良し関係」が大嫌い。「愛と仲良くは違う。私に仲良くしないでくれ」。次第にその発想も僕も受け入れました。プロテスタント系の人たちにそういう例が多いわけです。