トシコロさんの日記

2021年 08月03日 14:45

ボクシング恋愛

(Web全体に公開)

     恋愛は太古からあり、旧約聖書や万葉集にもたくさん出てくる。男女が心を通わし、互いに好きになり、さらに心を通わし、さらに好きになる、というパターンがいつまでも続くものである。心を深く通わすから互いの思いやりも生まれ、愛も生まれるのである。新約聖書にイエスが祝った結婚もそのようなことが背景にあると考えられる。「心を深く通わす」から恋愛は価値が高いわけだし、以上ならば死ぬまで愛は深まるはずである。無論、「心通わす」は繊細なものである。

  ところがすでに僕が生まれた20世紀後半のほとんどの恋愛なるものは、以上とは違ったパターンだった。僕のいた養護学校に来ていた若い先生や介助員、ボランティアたちの恋愛は男女どちらかがいきなり相手に「好きだ」と感情的に述べる例ばかり。1970年前後にあったTVドラマを思い出しても同様だし、歌謡曲も同じである。当時作られたアメリカやヨーロッパの映画にはもっと激しいパターンが多い。その10年後の僕の見た若者たちも同じだし、基本的には変わらない内容の歌謡曲もたくさんできている。

  今朝、オリンピックでボクシングの試合を見て気が付いたが、以上はまるで心のボクシングではないか。ボクシングは、相手選手を殴る時には脳内からは闘争ホルモンであるアドレナリンが出ると言われている。殴られた側は痛みのほか、やはり、応戦の為のアドレナリンも出るが、頭のある個所をやられるとオキシトシンという快楽と愛のホルモンも出て、そのまま卒倒し、勝敗が決する事がある。「好きよ」と異性に言われると大体は反発し、ケンカ別れになることも多いが、中には相手に喜ばれ、相思相愛みたいになり、結婚も。言われた相手の脳内に、オキシトシンが出たと考えられる。これが、日本に限らず、20世紀後半にあった恋愛結婚だったかもしれない。でも、新婚前後は一時的に幸福になっても、大体はボクシング的なやり取りしか知らない以上、夫婦になってもそれは続き、夫婦ゲンカも多く、双方が殴られる痛みに耐えきれず、離婚にもなる例も多いわけである。「ボクシングやりとり」は巷で聞いた所、見合い結婚でも同じで、その離婚例も戦前から多いわけである。見合い結婚の優位性を示す材料にはならないわけである。

   心の深いか良い愛ができない一番の理由は、ほとんどの人たちは落ち着きがないから。落ち着けないからである。各国の指針も不明確だし、世界全体がそうだから。何も戦後に限らなかっただろう。第二次世界大戦前は世界はもっとそうだった。だから、ナチスなるものも現れたわけである。戦後は国連による国際協調や、日本の場合は平和憲法もできて、露骨には不安感は薄らいだが、やはり、不安は強く、ベトナム戦争や中東戦争もあったし、経済成長を目指した日本も、その先の目標は誰も持てず、不安感があった。それなら、男女が出会っても深い心のやり取りができないのも当然ではなかったか。

  今もこれから中東が危険になりそうなニュースも聞いたし、日本も経済成長神話は終わったが、それに代わる指針もまだ出ていないなど、不安要素は強い。とは言え、我々は旧約聖書や万葉集などの古典から「心の深い通い合い」を学べるし、古典が苦手な人もそれを本当は自分は求めている事くらいは正直になれば判るはず。いつの時代でも正直になればまともな愛は得られるし、これからの社会ヴィジョンも一部の人たちが正直になれば出ると思うが。とにかく、恋愛も戦争などの大きな問題につがっているわけである。

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