トシコロさんの日記

2021年 04月12日 11:31

実録小説・シマハタの光と陰・第19章・結婚式

(Web全体に公開)

  障碍児者の兄弟姉妹は親と共にその世話をする事が多いため、適齢期になっても結婚縁がない事が多い。一生結婚できない例も戦前からかなりある。1970年前後の若者の一番の関心ごとも結婚関係だったため、非常に深刻だった。シマハタに入る前の園児の兄姉たちもそうだったが、そこに入り、介護負担もなくなったため、自然と御縁ができて結婚した例もかなりある。その一つを今回は述べよう。





  昭和46年(1971年)3月末の学校の春休みの時に、身障室の桃山和子ちゃんの姉の貴子さんが30歳で、多摩市に住む25歳の中学の男性教師の中山哲也氏と結婚式を教会で挙げた。執り行なった牧師は祝福の後、

 「素晴らしい夫婦が神の下に生まれました。哲也君から見て、貴子さんは年上女房ですね。世間ではタブーかもしれませんが、深い愛があります。イエス様は『神は愛なり』と説かれている以上、それはどうでも良いことです。これから二人のなれそめを御紹介させていただきます」

  牧師は少し水を飲み、間を置いて、以下話された。




  「お二人は、まず哲也君が島田療育園に今から3年前に社会見学のために行き、そこでたまたま来ていた貴子さんと出会われ、和子ちゃんの身体や、お人形が好きな事などを話すと哲也君は関心を持ち始め、その後も何回も逢って福祉のことを話し合いました。哲也君は次第に日本の世間も、政治も障碍児関係に非常に冷たい事を知り、怒りと悲しみを感じて、学校では生徒たちに福祉のことを授業の合間に教える事になりました。やがて、二人は『日本は福祉国家にならなければならないよ。ケネディみたいに福祉に取り組む総理大臣を出すべきだ』が合言葉になり、自然とお互いを大事にし合うようになり、深い愛が生まれ、又、哲也君は和子ちゃんを自分の妹だと思うようにもなりました。哲也君は末っ子で、妹も、弟もいなかったので、本当に和子ちゃんを可愛がるようにもなりました。彼の愛は貴子さんを越えて、和子ちゃんにまで広がったわけです。隣人愛そのものですね。去年の秋、まず哲也君が結婚希望を持ち、少しためらいましたが、10日後に貴子さんも同意して、今日の晴れの式につながったわけであります...」。

 

 式場には、二人の親戚や旧友の他、和子ちゃんが車いす姿で参加。身障室の職員たちもかなり来ていた。遅れて、林田博士も参列。来れなかった職員たちや身障室の園児たちにも後日、挙式の写真を多く見た。

  その写真を見た,13歳になる野口栄一は日記に代筆で

  「素晴らしい結婚式だ。おめでとう。お姉ちゃんにも良いお婿さんが来るといいな」と書いた。

 

  一方、すでに21歳を越えた秦野幸雄は心の中で

  「私にもお嫁さんが来るといい。聖書に『求めよ、さらば与えられん』とあるし、求めたらお嫁さんが来るに違いない。神よ、そうし給え」と思い、結婚願望を強めていった。

 

  また、女性職員の中には

  「私はもう35歳だけど、結婚どころか、彼もできないわ。忙しいし...」と言うものもいた。寂しそうな表情を浮かべて。職員は女性が多いが、男性との出会いの機会も乏しく、出会ってもデートする時間もなく、文通しても話も嚙み合わない例ばかり。少し先の多摩動物園を楽しそうにデートする同世代や若い世代のカップルとは大違いである。打つ手はないとは言え、林田博士もひそかに考え込み、悩んでいた。

  桜は散りつつあった。...。

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