年を取ったせいか妙に昔の、それもよくないことばかり思い出すようになったのですが、なんといってもソ連崩壊のときNHKだったかの番組で、旧ソ連の市民たちと日本の市民たちのTVを介したやりとりを映した中継を観て「あ、資本主義は暴走する」と感じたときほど外れてほしいと切に願った予感はありませんでした。
そんな予感を抱いた理由はどちらの画面にもあって、もちろんスタジオモニターに映っているロシア人たちのあまりにもピュアな喜びの表情が、この人たちは資本主義という劇薬の怖さを知らないまま手を出そうとしていると感じさせずにおかないものだったのも一方だったのですが、それ以上に暗澹たる気持ちになったのがスタジオにいたおそらく中小企業の経営者とおぼしき日本人の、あんたたちみたいな苦労知らずに資本主義なんかがやっていけるか! と吐き捨てた口調・表情でした。それは「お前らもこれから俺たちの苦労を思いっきり味わうがいい!」との思いがあまりにもあけすけで、これ通訳はそのままのニュアンスをロシア人たちに伝えているんだろうかと冷や冷やしながら見ていても向こうの笑顔が全く変わらないのでなんともいえぬ複雑な安堵のため息をつかされた、そんな一コマだったのです。それは最も見たくない形での驕りとも勝ち誇りともいうべきもので、これからは共産主義というライバルに完全勝利したと見なされることで劇薬としての資本主義のタガは吹っ飛んでしまい、世界中で暴威を振るうのを見せつけられるんだと、あのとき瞼に映る気さえしたのです。
あれからずいぶん年数がたった今つくづく思うのは、実は資本主義と共産主義には、というより世の中を良くするために生み出された全ての思想なりイデオロギーなりには、同じ部分に弱点があるのではということです。資本主義も共産主義も少なくとも誕生の時点では、その時々の現状をなんとか改善できないかとの思いで生み出されたもののはずでした。ということは、それらには扱う側の人間に世の中をより良いものにしたいとの願いがあること、つまりある種の性善説を大前提としているという共通点があって、その前提が満たされないことで取り扱いの注意深さが失われれば必然的に暴走するということではないのだろうかと……。
そんな愚にもつかぬことを、ますます思うばかりの今日この頃です。
コメント
もも
2021年 02月21日 09:40
皆が住みやすい平和な世の中になればいいですねー
ふしじろ もひと
2021年 02月21日 10:00
もも様おはようございます。本当にそれに尽きますね。
Yoshi
2021年 02月22日 10:18
資本主義の次の時代は必ず来ると思うのですが~
それは世界が統一できた時かな?
小説はコメントしてないけど 毎回楽しみにしています^^
ふしじろ もひと
2021年 02月23日 10:18
Yoshi様こんにちは。たしかに資本主義の次の時代を拝むのは、僕が生きてるうちには無理っぽいですね(汗)
地下版ゴジラは現在ちまちま執筆中ですので、今しばらくお待ち下さい(大汗)