今回は短くだが、大切な事を書いた。医学は対人間を扱う面と、科学としての面があり、バランスが大事である。特に、対人間の面を忘れると患者を実験動物にしかねないわけだから、かなりの葛藤がある。本当に忘れたのが、小説にも書いた、ナチスの医者たちである。それはいけない事は、林田博士のモデルの、小林博士もよく知っていた。クリスチャンならば、尚更である。


　　身障園生Ｍ氏は手記に「今（１９７０年代後半）は、島田の心がない」と書き、嘆いていたが、７０年代に入り、少しずつ歯車が狂っていった。という事は、１９６９年の時点では、狂ってはいなかったわけである。でも、誰にも見えない、小林博士の心の中では、悪魔がささやき始めていた。時も「悲しみは駆け足でやってくる」という歌が流行っていたから、それも重ね合わせて。

　　因みに、患者を人体実験にする事は、世界各地で常にある事である。多くは隠ぺいされているから、更に厄介である。