*暴く憎悪
「産んだ? でも、あれは植物じゃ?」
「人間だったわ、生まれたときは……」
巨大な芽を指さしたまま言葉を失う省次に俯く女。やがて顔を上げた女が沈黙を破る。
「あいつは、山川は、私の研究をなんといって渡したの?」
「提供されたといってました。名前を出さない条件で」
「そんな話を信じたの? あの人でなしの嘘つきの!」
「変だとは思ったんです、僕も湯原先生も。じゃあ本当は?」
「奪われたのよ! 五人がかりで丸ごとっ」
「なんだって!」
再び激高する女の叫びに、思わず棚を振り返る若者。
「犯罪じゃないですか! 警察は?」
押し黙った女の、握りしめた手が震えていた。
「……行けるはずないじゃない」
唇が、ようやく漏れた声がわなないていた。
「訊かれるのよ。何度も何度も、なにがあったのかって……」
「でも、それが捜査」
いいかけた言葉に叩きつけられる叫び!
「どんな目に遭わされたかまだわからないの? 想像できないとでもいうつもり? 君だって男のくせに!」
瞬間、省次は射抜かれた。紛れなき憎悪のまなざしに、それが暴く無惨な真相に!
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コメント
もも
2020年 10月18日 11:41
次の展開が楽しみです
ふしじろ もひと
2020年 10月18日 17:04
もも様こんばんは。
次回は完全に恨み節です(汗)