*強奪命令
「武部君、君の部下たちに頼みごとがあるんだ」
「汚れ仕事ですか」
「おいおい、そんないい方はないだろ?」
大げさに肩をすくめる山川。次の言葉を待つ武部。
「白神君に直接掛け合ってはみたが若さに似合わぬ頑固者でね。省次君のように聞き入れてはくれんのだよ。さしずめ芹沢博士もああだったのかもしれんな」
「協力する気がないのですね」
武部が口元を引き結び、山川の唇が笑みにゆるむ。
「プロジェクトの停滞は許されん。だから研究成果はすべて押収するんだ。研究は湯原先生が引き継いでくれる」
「では女は口封じでよろしいですね」「まあそう焦るな」
出て行こうとする武部を大仰に遮る山川。
「彼女は本物の天才だ。まだまだ殺すのは惜しい。だから君の部下たちに屈服させてもらいたい」
「手強そうな女ですよ。厄介なことになりませんか?」
「まさか訴え出るとでも? 一族を離散にまで追い込んだ世間に縋るほど彼女だって馬鹿じゃないさ。それとも君の部下たちは、そんな寄る辺ない女一人ねじ伏せることもできんのかね」
応えぬ武部に、山川が再び肩をすくめて見せる。
「まあ君のいうとおり、少々骨は折れることかもしれん。いつも世話にもなっていることだ。たまには彼らにもいい思いをさせてやってくれたまえ」
「伝えておきます」
ドアが閉まると、山川はサイドテーブルに取り出したコップにお気に入りのバーボンを注ぎ祝杯を挙げた。
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コメント
もも
2020年 10月14日 06:08
どうなっちゃうか心配です
ふしじろ もひと
2020年 10月14日 06:15
もも様おはようございます(汗)
メチャメチャ酷いことになります(大汗)