ふしじろ もひとさんの日記

2020年 09月17日 23:49

私家版(地下版?)ゴジラに至る道:その17

(Web全体に公開)

<メディアミックス版ゴジラにおけるプレストーリーの役割>
              2018年05月13日 記

 いよいよアニメ版ゴジラ3部作の第2作『決戦機動増殖都市』が今月18日に封切りとなりますが、前作『怪獣惑星』のときと同様、今回も映画の公開に先駆けてプレストーリーとも前史ともいうべきものが語られるノベライズ版『プロジェクト・メカゴジラ』が先行しました。前作『怪獣黙示録』と同じく『怪獣惑星』冒頭でワンシーン流れたメカゴジラの起動失敗に至る経緯やその後を詳細に綴ったものであり、ラストで淡い希望が仄めかされる以外はひたすら人類のなりふりかまわぬ抵抗と、にもかかわらず積み上がるばかりの膨大な犠牲、しかもそこには人間自身によるものも少なくないという暗澹たる敗北の記録を綴っています。
 今回は前回と異なり、これを映画を観る前に読めたのですが、これらのノベライズはやはりそれぞれの映画を観る前に読むべき作りになっていると痛感しました。むろん物語としての時系列がそういう順序になっているという当然至極な理由もありますが、これらノベライズ版での状況に追い詰められれば手段を選ばぬとしかいいようのない人間の姿が目に焼き付けられると、これらの小説と映画の全体で問われているのはそんな人間の業深さであることが否応なく意識されるからです。そこから生じる重苦しさの点で、ここまでのメディアミックス版ノベライズ2冊と映画1本の計3作はその容赦なさと物量により初代ゴジラさえ凌駕するに至ったと感じています。そして初代『ゴジラ』では通常兵器しか使えなかった人間が今回は宇宙人の技術も投入することで、ある意味ゴジラ以上に凄まじい破壊を他ならぬ地球に与えていることがきっちり描かれている点。初代『ゴジラ』で古代生物にすぎぬはずだったものを怪獣化させた人類は『怪獣惑星』では自ら怪獣めいた破壊を変わり果てた地球にもたらし、数日後に封切られる『決戦機動増殖都市』ではどうやら最終的には地球そのものすら機械化しかねぬ技術でゴジラに挑むものになるらしく、この徹底ぶりはただただ凄いの一言です。人間自身こそが怪獣を生み出すばかりか自ら怪獣として振舞いうる存在であり、その結果としてゴジラが現れ襲い掛かってくる。先行するのはあくまで人間側でゴジラではないことが貫徹されているのは実に素晴らしい!

 こういう人間の業深さの描写は『シン・ゴジラ』では意図的に抑えられ、映画の舞台が現代と地続きに設定されたこともあり、全体としては「国難に直面した我々日本人が役立たずの指導陣の亡き後に本領を発揮しそれを退ける」という快感原則が貫かれた映画になっていました。ゆえにあの映画はあれだけの大ヒットになったと僕は考えていますし、だからあの映画は初代『ゴジラ』ではなくむしろ『ゴジラの逆襲』を源とする映画だとも思うわけですが、今回のメディアミックス版のような「前史」がないのも特徴的というか意味深です。これはやはり人間の業深さに深入りすることを意図した映画ではなかったからでしょう。あの怪獣がいかにして生み出されたかさえ、あの映画では初代『ゴジラ』のようにすら語られることがなく、先行したのはあくまでゴジラで日本人はそれに懸命に対処したという作りを貫いていたのでしたから。

 初代『ゴジラ』ではメディアミックス版でのノベライズの役割を、まだ終わって十年たっていなかった敗戦の実体験が果たしています。むろん正しくいえば現実の体験を核として作られた初代ゴジラの構造に倣っているのがメディアミックス版なのであり、我々がすでに敗戦の実感を持っていないからこそ、架空の対怪獣戦史を一から構築しているのです。それを初代『ゴジラ』の体験中に「私たちは戦争の被害者だった」との実感ゆえ混入を免れなかったある種の甘さをも排した上で成し遂げている先鋭さこそが僕にとっては素晴らしく、けれども多くの人々にはビター過ぎる点なのだろうと感じています。生身の体験に依拠して生み出された初代に対し人工的かつ冷徹な手つきでそれを再現したメディアミックス版。まさに「ゴジラ」と「メカゴジラ」です。メディアミックス版におけるノベライズはだからこそ、常に映画の封切りより早く刊行されているのです。


 その封切りがついに目前となったいま『決戦機動増殖都市』がどんな内容のものになりそうか、僕は予感めいたものを感じています。まず3部作中の第2作である以上ゴジラは倒れないはずという自明の前提に立つならば今回の作戦もまた失敗に終わるのは確実ですし、それがメカゴジラが起動した上での敗北なのもまず間違いないでしょう。そして『プロジェクト・メカゴジラ』中に示唆された建造計画の内容や前回においてのノベライズと映画の連動ぶりを思えば、対ゴジラ作戦もより過激な内容になり失敗がさらに深い絶望を呼び起こすことにしかなりそうにありません。それがメカゴジラなどという大掛かりな作戦の結果である以上、その失敗は人間側にとって単に負けたというだけでは収まらぬ、もはや後悔しか残らないほど手ひどい敗北なのではないでしょうか。それは主人公たるハルオにとって、彼のなにかを損なうほど大きな打撃となるのではないか。そんな気がしています。


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コメント

もも

2020年 09月18日 00:22

どの作品も
ラストが重要かもしれませんね
次作につながるのなら

ふしじろ もひと

2020年 09月18日 04:22

もも様おはようございます。
3部作だけにその点はとりわけ緊密な作りでした。

もも

2020年 09月19日 22:59

18はアップされるのですか?

ふしじろ もひと

2020年 09月20日 06:45

もも様おはようございます。
現在改稿作業中ですので、しばしお待ちください(汗)

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