ジャベリンの中に組み込まれた装置が作動すると、鎖が虹色に光ったとたんビーストの後足に貼りつき絡みつく。それと同時に後足から尾の付け根にかけての部分に痙攣が走る。アントラーの虹色光線を解析して作られた強力な磁力光線を体内に直接流すことで、瞬発力を生み出す機構の誤動作を狙ったのだ。
「脚腰の動きは鈍らせたわ。各機、攻撃を尾に集中せよ!」
「ラジャー!」
ウィング・オブ・ホープから放たれる弾幕を、だが稲妻模様の発光とともに退ける巨大怪獣。
「くそ、まだ防御機構は生きとるんか」
「通常攻撃ではあれを突破できないわ」
悔しがるタカフミやサヤの眼下で銀光放つスラッガーが2本の尾を両断するが、あっという間に再生してしまう。
「これじゃキリがねえぜ!」
”焼き払わないと再生する。でも防御光線を止めない限り火力による攻撃は受けつけない。いったいどうすれば……”
「ったく、こっちが撃つ前に光るんだからやっかいだぜ」
苦り切ったゼロの言葉にはっとするソラ!
”こちらが撃つ前に? ゼロ、本当か?”
「間違いねえ。わずかだが、確かにヤツの方が早い」
”だったらあいつはこちらの状態をモニターしていて、その変化に反応してるのかも。温度かエネルギーみたいなものを”
「となるとビースト化する前からある能力だから、どこかにセンサーが……、そうだ! あの回転角が怪しいぜ」
”なるほど。とにかくあれを壊そう!”
『碧宙の剣』を構えるゼロの意図を察したのか、形の違う2つの首を牽制するようにゆらめかせる醜悪な巨獣。その背後から黒いオーラが、もう1つの首のようにこちらをうかがっている。磁力光線による痙攣は見られない。あまりの巨体ゆえに前半身までは効果が及んでいないのだろう。
四つん這いの姿勢ゆえに前脚の動きは封殺されているが、機械的に瞬発力を強化された首や尾は細かい動作ができず単に振り回しているだけだ。だが相手がビースト化した今、その単純な剛打こそが恐るべき脅威と化していた。もし叩き伏せられたら最後、闇の牙の餌食は免れないのだ。それを誇示するかのように、焼かれた右の首の位置にオーラの鎌首を配して触角を持つ中央の首をガードする巨大ビースト。左へわずかずつ回り込みつつ間合いを計るゼロに、動きを封じられた後足を軸に向きを変えて追随するビースト。それにつれて断続的に痙攣する巨大な尾が、斜め後で瓦礫に埋もれたままのシルバー・フォックスに迫っていく!
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建物の残骸を打ち崩しながらじりじりと迫ってくる巨大な尾の圧倒的な恐怖。だがその目が意識のないチーフとレオンに向いたとき、兄のものと同じ形の剣を構えるゼロにソラの姿が重なった幻影にかきたてられた思いがテラの胸底から突き上がる!
あんなふうに兄さんも、みんなもウルトラマンになって戦っている。僕を助けるために。だったら僕も2人を助けなければ!
とにかく怪物の右横に回り込んで向きを変えさせるしかない。それしか尾を2人から遠ざける方法はない! 色をなくした唇を噛みしめつつも、車外に出るや瓦礫の陰を縫うように走り始める少年。その行く手にやがて見えてくるクレーターさながらの巨大な穴。
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あまりの熱に溶けた土壌がそこかしこでガラス状に固まっている巨大な穴に、炭化したまま埋もれている阿修羅の残骸。だが、その陰からにじみ出てくる人の大きさほどの闇。それが穴を流れ上がり黒衣の女の姿になったとたん、走り寄ってくる足音。1枚だけ残った壁の陰に隠れた女の前を、気づかないまま走り過ぎるテラ。その必死の表情に声をかけるのをやめ、後ろに伸びた影の中に女は身を溶け込ませ後を追う。
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ようやくテラが巨獣の右横に回り込んだとき、毒蛇のような闇の鎌首の根元の後ろの巨大な脇腹に裂け目がいくつも口を開けて牙を剥く。おぞましい光景に戦慄しつつも悟るテラ。あの鎌首を囮にゼロに喰らいつく気だ! 瞬間、声を限りにテラは叫ぶ!
「こっちを見ろーーっ、卑怯な化け物!」
コメント
もも
2020年 08月07日 00:10
チームワークで頑張って欲しいです
ふしじろ もひと
2020年 08月07日 00:31
もも様こんばんは。
まさにそんな展開になります♪