「これでもかっ喰らえ!」
タカフミのバロンがミサイルを放つが、すべてビーストエレキングに届く前に撃ち落とされる。
「くっ!」
悔しがるタカフミだが、まだハイパー・ディメイションは使っていないし、スペシウムミサイルもまだ残っている。
「あったま来たわ! バーベキューより火葬にしてやるっ! ハイパー・ディメイショ…」
サヤがビーストエレキングにブレージング・カーニバルを叩きこもうとしたが、放電光線をかろうじてかわす。
“くっ、このままじゃサヤ達までやられるぞ”
“あ、ある! タカフミさんとサヤさんの協力があればっ”
ソラはゼロの超能力を使って、ワルキュリアのコクピットの音楽プレーヤーを再生し、大音量で外へ流し始めた。ジェラルド・バトラーとエミー・ロッサムによる『オペラ座の怪人』だ。
「タカフミ、六甲おろしよ!!」
サヤが手短に説明すると、タカフミもニヤリと笑いプレーヤーを稼動。高らかに響き渡る『六甲おろし』
と、棒立ちになるビーストエレキング。ピット星人による音波コントロールはビーストエレキングには効果はないが、なぜか特殊な音階に反応する習性は残っているようだ。
“ゼロ、フルーレを!”
二つのスラッガーが細身の剣となるや、ゼロは棒立ちになったビーストエレキングの背中の巨大な刺に剣を突き立てた。
シュッ…!
慎重に剣を抜くと、刺はパリンと軽い音を立てて崩れた。刺が割れたのを感じてか、ビーストエレキングは我に帰ったように、背後に立つゼロを振り返る。
「明らかに動きが衰えたわ!」
「よっしゃ、サヤ、ソラ、行くで!」
『六甲おろしに』加え刺を破壊されたのがこたえてか、ビーストエレキングの動きは、明らかに鈍くなっている。それでも普通のエレキングより遥かに早いが、ハイパー・ディメイションを搭載した超戦闘機で、互角に戦える。
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「う、うううん……」
テラは目を覚ました。後部席の真ん中で咄嗟に頭を抱えて小さくなったため、目立った外傷はないし頭や胸を打ったような鈍い痛みもない。
「倉澤先生、レオンさ……」
言いかけて凍り付いたテラ。前部席は落下した瓦礫で埋まり、レオンも倉澤チーフも傷つき意識を失っている!
「先生、先生!」
テラが呼びかけるが、倉澤チーフもレオンもあちこちから血を流したまま意識が戻らない。
「ど、どうしよう…! お薬とお水だけでも」
シルバー・フォックスの後部席の下には、非常用の医薬品や飲料水、食糧が詰まったケースがあるが、テラはそんなことを知らない。不安に目頭が熱くなりかけたとき、瓦礫と瓦礫の間から頭上をワルキュリアが、そして空気を切り裂く音と共にゼロスラッガーが空を舞うのが見えた。
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「うわっ! 今度は電撃バチバチかいっ!」
「タカフミもソラも援護して! 奴の足を一つでも潰さなきゃ。ハイパー・ディメイションシステム、スターティングオーバー。カマエル・ブレージング・カーニバル!」
地表すれすれを飛びビーストエレキングに迫るサヤ。深紅の重戦闘機を包む金色のハイパー・ディメイション・シールドに火炎地獄が宿る。狙いは一点、右の後ろ足のみだ!
カマエルに、ビーストエレキングからの凄まじい電撃が迫る。タカフミが我が機を盾にしようとするが、間に合わない!
咄嗟に投げたゼロのスラッガーが避雷針の役割を果たし、カマエルはビーストエレキングの懐に飛び込むことに成功した。
「シューティング!」
サヤは直ぐさま操縦桿を切り、カマエルを海に飛び込ませるように回避した。
「やったでっ!」
ビーストエレキングの大黒柱のような右後ろ足が、落雷に打たれた巨木のように完全に炭化する。それを見たソラが叫ぶ!
“そうか、避雷針だ! ゼロ、俺の『碧宙の剣』を巨大化できるかい?”
“出来ねえことはないが、ソラ、もうお前の手で扱えることができねえことになるかも知れねえぜ”
“構わない。真柴リーダーとヒトミさんを守り、タカフミさんやサヤさん、君が思う存分戦えるなら。父さんもきっと理解してくれるさ”
“お前にしちゃ随分思いきりがいいな。よし、行くぜ”
ゼロの顔面をかすめるように飛ぶワルキュリア。
「お。なんや、宮本武蔵か?」
「あの剣の形って、まさか!」
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「あれは兄さんの剣? ゼロが兄さんの剣を手に!」
恐怖に竦み震えていたテラの中で、何かが弾けた。
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突如ビーストエレキングの左後ろ足のそばに地底戦車セレニテリアスが現れ、ビーストエレキングの太い足首をワイヤーつきのジャベリンが貫いた。
「ビーストエレキング、アントラーの虹色光線、たっぷり喰らいなさいっ!」
コメント
もも
2020年 08月06日 02:16
中々手ごわいですね
ふしじろ もひと
2020年 08月06日 04:25
もも様おはようございます。こんな攻防がしばらく続きます。