「な、なんやなんや? バカでかい怪獣が出て来たで!」
操縦桿を切り、高度を上げていたタカフミは気づいた。暗いのだ。
まだ日没まで、二時間近くあるし、今週夢野市はどピーカンで暑さも収まらないとあったため、空が暗くなるような雲に覆われることもないはずだ。
「まさか、さっきの黒いカーテンの強力版なんか?」
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巨大な脚で踏み潰される寸前に離陸し海上へ出たカマエル。
今使ったのはバーニングシュートで、まだハイパー・ディメイション・システムを起動してはいない。
海上へ出る寸前、ゼロと一瞬視線が絡み合った。
ナイスアタック、サンキュー。
ゼロの金色の瞳が、サヤに語りかけていた。
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アリーナへ急ぐシルバー・フォックスの目前に、黒いカーテンが立ち塞がるように、路を塞いだ。
「チーフ、アリーナと連絡が取れません」
「仕方ない。ステルスシールドで覆って隠れておくしかない」
新型戦闘車輌とはいえ希望のツバサに比べると、あまりにも武装は落ちる。まして今は非戦闘員であり、まだ子供といってもいいテラを連れている。
ステアリングを切り古いビルの陰に隠れ、ステルスシールドを張り巡らせたシルバー・フォックス。レオンと倉澤チーフは脱出後もアリーナまで、無事にテラを届けることがミッションだ。
そのシルバー・フォックスの後部席で、テラは震えていた。保護されたため、かえって恐怖心が揺り返されてきたのだ。
首に下がるペンダントを握りしめ、先ほど夢で再会した母の言葉を思い出し、恐怖を押し殺そうとしている。
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「……リーダーりん。この周囲半径三キロが、特殊なフィールドにあるみたいです。アリーナとも、交信できません」
旧湾岸通地底で待機するセレニテリアス。
「まだよ。私達はラストバッターよ。打順が回ってくるまで打席には立てないわ」
後部席のヒトミに、語りかける真柴リーダー。
「でも……」
「私達はジョーカー。さっさとジョーカー出したら、勝つ勝負も負けるわよ」
焦るヒトミの気持ちを理解しつつもタイミングを図る真柴リーダー自身、鼓動は早くなっている。
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「はあはあ……やっと、地上だ」
天井川である白竜川を白竜湖まで駆け登ったヘナチョコ侵略者五人組。全員変身腹巻を装着しているため、普通の地球人の顔をしている。
その逃げ足の凄まじさ、どこか実技団に入ってオリンピックに出れば金メダルも夢でないことに彼らは気づいてもいない。ゴールにうまーい飯を置けば、彼等は遮二無二世界記録でゴールインするだろう。
「ねえ、あれ、どうなってんの。私達のアジトがある地域じゃない?」
メースが指さしたのは、海に面した地域がすっぽり黒いテントかドームのようななにかに覆われている光景だ。
白竜湖周辺は夢野アイランド唯一のゴルフ場がある高台であるため、夢野市の南部が見渡せる。
「どーなってんだ」
オースは頭をかく。
「あれは桁違いの暗黒の力のようです」
ドースが眼鏡を上げながら呟く。
「なら、ゼロやB・i・R・Dはあの中で、あの怖いお姉ちゃんと戦ってるの?」ミースがドースに尋ねた。
「おそらく、そうですね」
「ゼロはともかく、B・i・R・Dがやられたら、オレ達の、うまーい飯はどうなる。ドース」
「おそらく、食べられないことになると」
「「「「なにぃーーーーつ!!!」」」」
「よし、かくなる上はB・i・R・Dとゼロを応援するのだっ! 全てはカナリーの飯のためだぁあーーっ!」
ボースの鶴の一声により、にわかにB・i・R・D応援団となる、一応、侵略者。凄まじくヘナチョコで、スットコドッコイでも、一応、侵略者なことも忘れて、うまーい飯のために、エールを送る五人組。
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“うおっ! こりゃデカイな。”
“以前に神戸で、メビウスとウルトラ六兄弟と戦った、Uキラーザウルスネオより、まだ大きい!”
後ろへ飛びながら、ゼロとソラは、敵を調べていた。五十メートル近いゼロですら、小さく見える程だ。
“あれを見て。あいつがこれまで喰らってきた存在よ。…私達の宇宙で平和に暮らしていた人々を、あいつはなぶり殺しては、喰らってきていたのよ!”
ヒロコが指さしたのは、ビーストと化したハイパー・エレキングの胴体だ。ゼロもソラも、背筋が凍りつくのを感じた。
そこにあるのは、デスマスクの群れだ。
様々な知的生物……ソラやゼロにも、理解に苦しむような形態でも……が苦悶と恐怖に顔を固められたまま、ペナントのように並べられているのだ。
“なんてヤツだっ……!”
“絶対、許さねぇっ!”
怒りに燃える二人の戦士たちにたたき付けられる、モーニングスターのような尾!
“なんだと?”
動きが、ゼロですら追えないのだ。
コメント
もも
2020年 08月04日 07:25
大きい敵ですね
ふしじろ もひと
2020年 08月04日 07:42
もも様おはようございます。
単にデカいだけでなく本気で強いので、実に厄介極まりない敵です(大汗)
もっさん
2020年 08月04日 15:12
侵略者がB・i・R・Dとゼロの味方って
普通じゃありえませんが
5人組にとっては美味しいご飯の方が大事なんですね。
ふしじろ もひと
2020年 08月04日 18:23
もっさん様そろそろこんばんは。
いえいえ「の方が」どころか、もはや美味いメシ以外のものは眼中にすら入ってないといいますか(苦笑)