そのとき再びオーラを身にまとい始める黒い千手に、戦慄する天使の姿の闇。
”あやつ、なにがなんでもこの巨人の力を喰らい我を倒すつもりかっ”
巨人の力を取られては勝ち目はない。とにかくこいつを倒さねばとの焦りが微かに残っていた得体の知れぬためらいを圧殺し、両者の間に跳び込むやゼロを襲う触腕を再び斬り払う闇天使。灼熱する2本の槌矛で仇敵を牽制しつつ叫ぶ悪魔が化けた天使!
「この世界でも悪をなすか怪物め。ここがきさまの墓場だ!」
「なにをいうの! おまえこそ化け物のくせにっ」
掴みかかる黒い阿修羅の前に跳び出し、両手の刃で巨大な爪を受け止めるゼロ。見交わす目と目。次の瞬間、相手を突き放すやゼロは猛然と打ちかかる!
「それが人を喰らおうとしたヤツのセリフかよっ」
「加勢するぞ、光の戦士よ!」
嵐のごとき刃と槌矛の猛襲に、蜘蛛のような鬼はたちまち押され始める。
-----
不時着したままのカマエルのコクピットで、ターゲットスコープを睨みつつエンジン出力を上げてゆくサヤ。四角い視野に背をさらすゼロと翼持つ天使の姿に唇を噛む。
彼らはずっと黒い阿修羅と自分の間に割り込んで戦っている。自分が再び人質に取られるのを警戒していると悟り、いら立ちと悔しさをつのらせているのだ。
戦いは前に踏み出し攻め立てるゼロを斜め後の天使が援護する形になっていた。黒い阿修羅の横への動きを封じ、長大な触腕や爪の横からの攻撃を槌矛がことごとく打ち払うため、直線上での攻防に終始しているのだ。だが、これでは彼らが邪魔で化け物をロックオンできない。だからといって離陸すれば、こちらを向いている敵に気づかれる。とにかく奴の姿を捉えなければと高まるエネルギーをたわめつつ画面を睨みつけているうち、突如として女戦士は気づく。
「あの左の槌矛、まさかゼロを狙ってる?」
-----
横並びで阿修羅に対峙していた自分を守るつもりか、ひたすら前に踏み込むゼロの背後でほくそ笑む邪悪な天使。
”くく、我に背を預けるか。では奴を倒せば褒美の1つもはずまねばな……”
抑えきれぬ欲望にじませ、ちらちらとゼロの背をうかがう左の穂先。
-----
”ゼロ、彼女は” ”ああ、それよりわかるな背後の気配”
うなづくソラ。
”いくぜ、ここが正念場だ!”
雄たけびとともに若きウルトラ戦士は鬼女の胸元深く踏み込み激しく切り結ぶ。そのとき入る倉澤チーフの緊急無線!
>救出成功。みんな、敵は天使だ!<
「今だ、ねーちゃん!」
サヤの指が反射的にボタンを押したとたん、阿修羅を真後ろに巴投げするゼロ。その爪に貫かれのけ反る天使がたちまち業火に包まれる!
「お、おのれ! 騙しおったかあーーっ」
「気づけたはずよ。円盤を人質に私を振り切ったおまえなら」
悶える敵の耳元にささやく、哀れみさえ帯びた鬼女の声。
「だっておまえがいったのよ。誰かを犠牲にしてまで自分を倒せないくせにって」
その言葉に火達磨の天使が硬直する。己の感じていた違和感の正体にようやく思い至ったのだ。
「けれどおまえはゼロの力に目がくらみ、私が彼を喰うのを疑いきれなかった。おまえ自身がそうする気だったから、先を越される怖れに惑わされてしまった。おまえを欺いたのはその欲望よ。おまえは自分の本性に裏切られたのよ!」
叫ぶやいなや燃え上がる姿を両断する阿修羅! 絶叫する姿が炎の中に崩れ落ちる。
「やった!」「いえ、ビーストの恐ろしさはこれからよ!」
その言葉も終わらぬうちに、光の鬼神と闇の阿修羅の前で突然膨張を始める炎の塊。跳びすさる2人の巨人をはるかに上回る大きさになりゆく業火の中から、醜悪きわまりない巨獣の姿が見え隠れする。大地に這いつくばる500メートル近い巨体を覆う岩のような表皮。エレキングの首の左右から生えたワニの首が牙を剥き出し咆哮するや、二又に分かれた長大な尾が稲妻を走らせ、背に並ぶ水晶のような刺の列が虹色の光を帯びる。やがて3つ首の胸元近くに昆虫まがいのピット星人のデスマスクが浮かぶや、虚ろな、だがダークフィールドを圧するばかりの声が叫ぶ。
「許さぬ。うぬら許さぬぞ!」
コメント
もも
2020年 08月02日 14:37
500メートルもあるんですね
ふしじろ もひと
2020年 08月02日 14:53
もも様こんにちは。なにせ『ウルトラマンネクサス』ではアメーバやゴキブリ、ネズミなんかを同化したビーストが怪獣サイズになってましたから、怪獣を同化なんかしたらとんでもない大きさになるのではというのでこんなことになりました。ちなみにウルトラマンゼロの身長が50メートルなので10倍もの体格差になります(汗)