凄まじい怒号と悲鳴に気づき、影に溶け込むゴスロリドレス。とたん、壁を切り裂く衝撃とともにヘナチョコ侵略者５人組が悲鳴を上げつつ猛ダッシュしてくる。そこへ追いすがる忘れようのない叫び！
「おのれビースト！　ここがお前たちの墓場だっ」
　もはや人の形をなくした仇敵の斬撃はまたも獲物の頭上を掠め壁をぶち破り、両者は瞬時にその穴から走り去った。


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　旧湾岸通、第一突堤にステルスシールドを張り巡らせ待機する『シルバー・フォックス』
　その運転席の倉澤チーフとレオンは、第四冷凍倉庫のぶち抜かれた壁からカトゥーンアニメさながらに走り出る５人組と人型をしていない影を見た。
「凄い逃げ足ですね。短距離走ならオリンピックで、金メダル取れますね」
「チーフ、一体どの国でエントリーですか」
　小さく苦笑する倉沢チーフだったが、すぐ真顔になる。彼らの役割は人質であるテラの救出だ。


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　アリーナのミッションルームでは、高嶺科学分析部リーダーがワルキュリアからのビームスキャンデータを解析している。
「これなら『シルバー・フォックス』で突入可能です。テラ君はおそらく、このセンターにある空間にいるはず」
　と、第四冷凍倉庫に突入した５人組からの映像を確認していたタカフミが叫ぶ「テラ坊や！」
　金魚鉢を伏せたような透明なドームの中に、赤毛にグリーンのシャツを着た少年が床に俯せに倒れているのが見えた。
「酷い！　逃げられないよう鎖で縛るなんてっ」
　サヤが目を吊り上げるうちにも、映像は夏空の旧湾岸通の埠頭に移り、たちまち第二突堤に追い詰められたヘナチョコ侵略者。影が放つ攻撃の余波で、派手に海へ落っこちる５人組！
　そこにプカプカ浮いている、お菓子を貼りつけたブイ。目の色を変えお菓子を取ろうと５人組が泳ぎ寄ると、そこには没収されたはずの変身腹巻と手紙も貼りつけられていた。


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「ビンゴ！　彼ら、白竜川の河口に向かいましたよ」
　高嶺科学分析部リーダーが、ヘナチョコ侵略者５人組が無事に逃げきったことを確認。夢野アイランド最高峰寒風山から注ぐ白竜川は旧湾岸通付近で天井川となり、その河口がちょうど第二突堤にあったのだ。
　ブイに貼付けられていた手紙の指示は、河口から５キロ行けば白竜川公園に出るから、そこから地上へ脱出せよというもの。河口を見つけ、変身腹巻をそれぞれ手に地下の河口へ飛び込む５人組。ヘナチョコ侵略者からの映像が、ひたすら地底の川を走る光景に変わる。

　それを見て、真柴リーダーが、ヘルメットとグローブに手を伸ばした。
「タカフミとサヤはそれぞれの愛機へ。ヒトミは私について来なさい。光成補佐官は１５分後に全市強制避難命令発動。後は頼みます」


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　タカフミとサヤが愛機へ乗り込んだとき、真柴リーダーとヒトミが向かった格納庫に待機していたのは、シャンパンゴールドの機体。
「えっ。リーダーりん。まさか、これ」
「シティではメガΩレーザー砲なんて使えないもの。久しぶりの出番ね」
　西澤技術部リーダーが真柴リーダーに近寄り囁く
「メンテナンスは完全です。例の機能も稼動実験に成功しています」
　頷き返した真柴リーダーがＢ・ｉ・Ｒ・Ｄエッグδの前部席に乗り込み、ヒトミが後部席に続く。シャンパンゴールドの機体前方にそびえる巨大ドリル。そう、地底戦車『セレニテリアス』久しぶりの出番だ！


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「おのれ、ビースト、どこだっ！」
　そこへ、急旋回して鬼女へ向かうワルキュリア。機首のガトリング砲が火を噴き、鬼女を埠頭の突端へ追い詰める。
「邪魔をするなっ！」
　鬼女はたちまち五十メートル近いサイズとなるやワルキュリアめがけ触手を放つ。猛スピードでかわしていくその操縦席で白熱の光を放つソラの左胸！
“行くぜ。ソラ。一発勝負。リハーサルなしの大舞台だぜ”
“わかっているさ。君と俺、そしてヒロコさんとで、いかにビーストを欺くことができるか！”
　愛機を自動操縦に切り替えたソラが、そのオッド・アイにゼロの金色の瞳を重ねた！


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「タカフミ、サヤ、出撃だ！」
「ラジャー！」
　アリーナのモニターに触手に捕まったワルキュリアが映った瞬間、光成補佐官の号令でバロンとカマエルが飛び立つ。同時にセレニテリアスもエンジン起動だ。
「目標、旧湾岸通！」
　真柴リーダーの操縦で、金色の地底戦車はドリルを回転させつつ地下へと消えた。


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　触手から逃れようとエンジンを振り絞るワルキュリア。瞬間、その上空に生じた輝きがゼロの姿をとりつつ鋭いトゥ・キックでワルキュリアを触手から切り離す！