その頃、熱海で静岡県警察と共にテラの足跡を探していたヒトミは、テラの最後の目撃者を見つけていた。
「間違いないっす。この男の子とこのお姉ちゃんっす。お姉ちゃんが手を引いて、そこの『曼珠沙華』に入っていったんす」
テラの最後の目撃者は、宅配ピザのドライバーだった。その宅配ピザショップは、ステーションアタミとテラが食事に行ったレストランの途中にあった。
潰れたラブホテルへ入っていく、明らかによそ者の二人。ドライバーの青年は配達に向かいながらも、信号待ちで遭遇したちぐはぐなカップルを覚えていたのだ。
「『曼珠沙華』はこの春、オーナーが死んでから、ほったらかしのはず」刑事の一人が首を捻る。
「行ってみましょう」
「鍵が、壊されてる…?」刑事の一人が気付いた。しかも外からではなく、内側からだ。
「これは、微弱だけど地球外物質反応!」
B・i・R・Dグラムは、ごく微弱な地球外物質反応を、この建物の中に検知している。
刑事達とヒトミは『曼珠沙華』に入った。鑑識の見立てでは、ピンヒールの足跡は出て入った形跡があり、テラのスニーカーの足跡は入っただけということだ。そして地球外物質反応が発されている客室の前に、刑事達とヒトミは立った。ブラスターシュートを構えるヒトミを正面に、刑事が横からドアを開ける。
「誰もいない……」「いなくて当然ね。これ、テレポートキューブ。地球外物質で作られた今の地球では作れないオーバーテクノロジーの産物です」
ヒトミがブラスターシュートで指した、黒い真四角の結晶のような物体。
「テラりんはもう熱海にいない。どこかへ侵略者が連れ去った。もう警察では手に負えない状態」
ヒトミは警察の許可を得て、テレポートキューブを持ち帰り調べることになった。
----------
「だあっ、ええ加減にせいっ! テラ坊誘拐してまた三億儲けようとしたんやろドアホっ」
「タカフミ、テラ君の誘拐は時間的に不可能ですよ。しかし貴方達が遭遇したその謎の女は、何を探していたんですか?」
調書を取りながら倉澤チーフが尋ねる。だが五人とも、盛大に空腹ラッパを鳴らして、グッタリしている。
タカフミと倉澤チーフも、途中休憩しつつも、かなり疲労している。
「タカフミ、一旦尋問は中断しましょう。私達も疲れてますし、彼等も腹ペコでしゃべる力もないようですから。保安部、彼等を地下へ連れて行きなさい」
「ま、そやな。で、お前ら。今日の昼やが、Aランチはさばの味噌煮とにゅうめん。Bランチが鶏の唐揚げネギソースとけんちん汁やけど、どっちがええねん」
臭い飯とて飯にありつける?! 生活苦に喘ぐ五人組の目の色が一気に変わる! しかも生活部のママ達が真心こめて質のいい食材で作るアリーナの飯の味を、彼らはまだ知らないのだ。
----------
身をよじって刃をかわしたソラ。だが避けきれず、刃が頬を掠める!
“行くぜソラ! このままではお前がやられる”
「ああ、行こう」
オッド・アイの青年の左胸がまばゆく輝き、その輝きが黄金の瞳を縁取る銀と紅と青の仮面になる。ソラの黒とブルーの瞳と、仮面の黄金の瞳が重なるやその姿は光となり、次の瞬間コバルトブルーの制服の若者から、銀色のマスクにブルーと紅のボディを持つ光の国の戦士となる!
“オレはゼロ。光の国のウルトラ戦士、宇宙警備隊所属のウルトラマンゼロだっ! 訳あっていま、『かけがえのない星』地球をソラやソラの仲間たちと守っている。
へッ、臭うぜ。間違いなく怪獣の、しかもこんな臭いは初めてだ。行くぜソラっ”
ゼロはゼロスラッガーを両手に、今や鬼としか呼べない姿と化した異星の客に向き直る。
メビウスも今は地球にいない。大隊長に一時的に呼び戻されていて、地球でまともに怪獣と戦える戦士はオレしかいない!
ついに二人の阿修羅が、極彩色の超空間で激突する!
----------
「こんなヘナチョコな怪獣、ゼロならパパパのチョイでやっつけるよ。ゼロは強いから!」
テラは巨大な水槽の中で造られていくハイパー・エレキングを見て、ゴスロリに噛み付く。
「フフ、ゼロとは戦いになんかならない。ゼロはなすすべもなくハイパー・エレキングに腕も脚ももがれ、首も折られてバラバラになるの。そのためにテラ、君がいるんだもの。君が切り札なのよ、フフっ」
テラはその場にへたりこんだ。ゼロが殺される、僕のせいで。悔しさが涙となり、膝を濡らす。
そのとき水槽のコンソールが、異常をアラームし始めた!
コメント
もも
2020年 07月19日 02:21
ゼロがしっかり戦えないですね
ふしじろ もひと
2020年 07月19日 03:56
もも様こんばんは。なにしろそのための人質ですので。
そんなわけでテラをどう救助するかがこのお話の大きなポイントだったりします♪
もっさん
2020年 07月19日 10:10
五人組はAランチとBランチどっちを選んだんでしょうね~?
まさか両方??
あまりの美味しさにずっとここに居たくなったりして。
ふしじろ もひと
2020年 07月19日 13:21
もっさん様こんにちは。なにせ5人いるのでそれぞれ好きなものを選びつつも、隣のも美味しそうなので皆が分けっこして食べたというのが宇宙人史上に残る真相だったりします。
……で、おっしゃるとおりすっかり味をしめた彼らが、ここから出たくない! とゴネる場面もあとのほうにちゃんと出てきたり(汗)